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映画・美術・イタリア旅行の紀行文の紹介です。

『2019年映画』「セメントの記憶」(監督ジア―ド・クルス―ム.シリアドキュメンタリー映画4/16

大きい文字>『2019年映画』「セメントの記憶」 (監督、脚本ジア―ド・クルス―ム..
             撮影監督,タラ―ル・クーリ、音響監督アンツガー・フレーリッヒ)
              ドイツ、レバノン、シリア、カタール、アラビア語 
              中東のパリ、ベイルート、地中海を眺望する超高層ビルの建設現場
                シリア人移民労働者の受難のドキュメント! シリア・ドキュメンタリ―

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<男性のモノロ―グ>
1975年から1990年までの内戦で、レバノンの中心街は崩壊した。その後、ある男の父が長い間、レバノンの建設現場に出稼ぎに行っていた。帰った父がキッチンに一枚の絵を貼った。ある男がその絵と父の記憶を語った。

「その絵には白い砂浜、青い空、風景を囲むように2本のヤシが描かれていた。その男が少年の頃初めて見た海の記憶である。父親の手のひらがセメントの味がしたのを思い出す。
父は少年に語った。“労働者は戦争が国を破壊し尽くすのを待っているんだ。”

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<ベイルートの高層ビル>
近代建築と歴史的建造物が混在した美しい街並みで、多くの観光客を魅了しているベイルートは、シリア人移民労働者にとって希望であり地獄であるといわれる。長い内戦(75年―90年)を経験したベイルートは、内戦で都市機能が完全に破壊された。そして今、建設ブームに沸く海岸沿いは超高層ビルの乱開発が進行中だ。超高層ビル建設の担い手はシリア人移民・難民労働者たちだ。彼らは自国の内戦(2011年3月~今も内戦状態)によってベイルートと同じようにすべて破壊され尽くして、難民となって海外に逃れた。そして、今奴隷的待遇の労働者としてベイルートの超高層ビル建設の担い手となっている。
シリア人たちは基本的人権すら保障されない労働環境で働いている。建設現場と住む地下はひとつの穴で繋がっている。ビルはベイルートの美しい街並みと真っ青な地中海を望んでいる。しかし、労働者にとって美しい街並みや真っ青な地中海は無縁なのだ。彼らの一人が「壁紙みたいな物」と言った。労働者たちは毎日蟻のようにその穴を出て、剥(む)き出しのエレベーターで高層ビルの屋上へ上り、セメントを運び、カッターでブロックを切り、ドリルで壁を砕いている。巨大な牢獄で暮らしているシリア人労働者たちは、祖国から亡命し異国でアイデンティティを探し求める旅路にいるのだ。
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燃えるような夕日がベイルートの海に沈んでゆく。渋滞の車のヘッドライトが揺れる、美しい夜景が労働者たちにも一日の終わりを知らせるが、彼らはいつもの穴を通り地下へ帰ってゆく。ビルには “午後7時以降、シリア人労働者は外出禁止” と書かれた大きな横断幕が張られている。

<夜>
 夜、地下は雨漏れで水浸しのところに電球の明かりが水に反射している。労働者たちはテレビを見ている。レバノン国境で追い返されるシリア人の映像、空襲で破壊されたアレッポの市街、シリア人難民への差別やダマスカスで政府軍によって使用されたとする毒ガス兵器で苦しむ少女について報じている。
 カメラは労働者の瞳にクローズアップする。(瞳の中がレンズのようになっていて)祖国が空爆されている映像を男たちは瞬きもせず見つめる。無言の男たちの虚無的な眼を映してゆく。空爆の轟音が途絶えることなく鳴り響く。

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<男の記憶=空爆>
空爆の轟音とドリルの轟音が夢の中で炸裂する。空爆で破壊され家の中で夢を見ていたのか?“立ち上がれ息子よ!どこかで呼ぶ声が聞こえる。僕はドリルの轟音で意識を取り戻した。しかし、身体を起すことが出来ない。体は瓦礫の中で埋まっていた。遠くから呼ぶ声が聞こえる。皆が一日中ドリルで瓦礫を削り僕を救出した。口の中は瓦礫で一杯だ。セメントの味が僕の心を蝕(むしば)んだ。

<朝>
内戦が終わったベイルートの人々は、朝工事の音で目を覚ます。労働者たちはヘルメットをかぶり、いつもの穴を登りエレベーターに乗り込む。12時間地下で暮らし、12時間地上で働く。彼らの上にベイルートがのしかかり労働者たちを支配している。

<男性のモノローグ>
父がベイルートから戻ってきた。僕は駆け寄ると父の手を握り抱きついた。抱きついた父はセメントの匂いがした。旅する人の匂いだと思った。父はシリアに私たちの家を建てた。セメントの匂いはずっと消えなかった。匂いが消える、父もまたいなくなった。

<サウンド(音響)>
これはドキュメンタリーだ。だが、このドキュメントでは映像とサウンド(音響)が主体である。昼間は建築現場の轟音。高層ビルでの労働者の労働と建築の轟音。夜は労働者たちが見るテレビやスマホでの空爆の轟音。建築現場の轟音と空爆の轟音とを交互にカットバックさせてゆく。瓦礫を踏みつけながら進む戦車の音。爆撃音とハンマーでコンクリートを叩く音。建設現場と戦場場面の境界線を取り払い、二つの現場のイメージとサウンドを積み重ねてゆく。
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<夜>
ビルの地下、水溜まりに反映される鏡のような映像では、階段を上がる労働者の姿が地下に下りて行くように映った。水溜まりはまるで世界の二面性を映し出しているかのようだ。
天国と地獄の二面性か。
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<男性のモノクローク>
内戦が始まり、悲報が続き、死が日常の出来事となり、次々と家が破壊された。ボロボロになって家に戻ると僕はキッチンに直行した。母はテーブルに頭を載せて眠っている。母の横に立つと大海が広がった。僕は海と空を見つめた。絵には歳月の跡が見てとれた。15年以上も経つ。初めてこの絵を見たときのことを思い出す。
<男性のモノクローク>
レバノン内戦が終わって、ベイルートでは復興ブーム・高層ビルラッシュだ!その労働の担い手としてシリア人移民難民労働者が使われている。シリア人労働者が隣国に逃げて奴隷のように使われて建設を担っている。その時、シリアの家々は空爆破壊されて壊滅になっている。レバノン内戦でも地下室は空爆破壊されたのだ。レバノンではセメントは水と混ぜられて建築資材となる。シリアでは空爆後に家屋が倒壊後セメントは粉塵となって空を舞う。この戦車と、戦車のような建設機械の対比。戦争と建設とは表裏一体ではないか!これはシリアだけじゃなく世界のどこでも起こりうる状況ではないか。
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<男の記憶>
 内戦が始まり、悲報が続き、空爆で次々と落ちた。死が日常になった。僕はボロボロになって家に戻った。キッチンにあの絵が張ってあった。15年も経つと歳月の跡を感じる。


 この海に飛び込んで二度と戻りたくないのだ。内戦へも廃墟にも。

 手を伸ばし海に触れると波がうねり始めた。ヤシが揺れ、僕は叩きつけられた。

―――――国外で働く全ての労働者に捧ぐ

 中東での出来事、戦争あいつぐ戦争。大量の移民・難民。自国で生きられなくて、國を捨てて生きられるところを探しての旅路。僕は眺めているだけだlった。
 
 このドキュメントを作ったシリア人アーティストたちに敬意を表します。只ならぬ才能を感じます。



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  1. 2019/04/16(火) 16:08:42|
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