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私の見た映画・美術・

映画・美術・イタリア旅行の紀行文の紹介です。

『2018年映画』「アリスのままで」(ジュリアン・ムーアオスカ主演女優賞9/5

『2018年映画』「アリスのままで」(2015年アカデミー主演女優賞=ジュリアン・ムーア)
               2015年6月公開          9/5               

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 テレビで放映された映画を時々録画している。秀逸な作品に出合った。前から見たいと思っていた「アリスのままで」である。若年性認知症に罹った女性学者の物語。ジュリアン・ムーアがこれで米アカデミー主演女優賞に輝く。久し振りに品質の高い作品に出合った。炎暑でぼっーとなった頭を覚醒してくれた。
 監督のリチャード・グラツァーは筋委縮性側索硬化症という難病を抱え、撮影中、容体が悪化、しかし右足の親指でiPadを叩いてコミュニケーションを取って映画を完成、3週間後息を引きとった。ムーアがオスカーに輝いた報を待っていて。

<映画の物語>
 50歳の誕生日を迎えたアリスは、大学の講義を持ち、幾冊かの著作がある有名な言語学者。医者の夫ジョン、姉娘アナ法科大学を出て結婚。妹娘リディア演技志望・熱演、息子トム(医学生)の3人の子に恵まれ、人生を順調に歩んでいるかの様だった。

<キャンパスをジョギング中、どこにいるか分からなくなる>
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ところが、授業中に言語を突然忘れる。大学のキャンパスをジョギング中、急に自分がどこにいるか分からなくなる。その時のアリスの恐怖に歪んだ表情、アリスが見ているキャンパスの何ともいえない風景、認知症の恐さをリアルに予感させるシ―ン。年のせいかしら?ボケがきたのか?と初めは思っていたが、何度か言葉を忘れる体験があったので、神経科の門を叩く。医者はアリスに色々な質問をする。生年月日とか、子どもの名前とか。その間に関係が無い事を入れて、前の質問内容を問うと、アリスは答えられない。MRI検査の後に、分かったことは、「家族性の若年性アルツハイマー認知症」。アリスの絶句!

<演劇志望の個性的な生き方をするリディア>
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アリスは、末娘のリディアが演劇志望で経済的に不安定、将来も不安だと、親子は会えばリディアの進路の話で揉(も)める。「将来のことを考えるべきだ、もっと別な可能性が、、、」リディアは「又、その話、もうウンザリよ!私は満足している」と母と娘の対立。アルツハイマーになった彼女にとってリディアの将来が不安だ。いつ意識がなくなるかわからないのに、この子は何を考えているのか?と心配している。

アリス、不安に駆られて夜、夫に打ち明ける。ジョンは「年をとると誰にもあることだ」と言うが、アリス今までにあったことを打ち明ける。「年のせいじゃない。抜け落ちるの。今も感じているの。脳細胞が死んでゆくのを!人生を捧げてきたことが何もかも消えて壊れてゆくのを、、、(泣き出す)
アリスに変わって夫が料理を作っている。夫の労(いたわ)りか。夫婦揃って神経科の診察を受けている。「家族性の若年性アルツハイマー認知症」子どもたちに遺伝するかは、遺伝子検査を受けて見なければわからない。
 
 子供たちを集めて打ち明ける。ジョン「とても、珍しい病気だ。家族性で遺伝するの。アリスは君たちのことを心配している。検査するかは君たちの意志だ。」アリス「本当に、ごめんなさい」と泣き崩れる。茫然とするアナとトム。リディアは何となくわかっていたか?

 アリス、大学教授を辞めることになる。学部長から見せられた学生たちのアンケート、話が難しくて飛躍したり、前にやったことを又やったりと、学生たちの不評にがっかりしてキャンバスを独り帰ってゆくアリスにアンナから電話。「陽性だった」(不妊治療でやっと妊娠したアンナこそ陰性であって欲しかったのに)「ごめんなさい!今どこ?すぐ行くわ。」とアリス。夫のリチャードと一緒だからと断るアンナ。(実は不妊手術に苦労しているアンナこそ陰性であって欲しかった。)トムは陰性、リディアは検査を拒否した。キャンバスを独りで帰ってゆくアリスの後ろ姿、静かな音楽がかぶさる。
(見ていて感迫るものがあった。大学の静かな構内、樹々、レンガ造りの教室、アリスに襲いかかる過酷な運命と心境を象徴するような風景だ。それにかぶさってゆくようなしみじみとしたピアノ曲が流れる。)

 街中を走るアリス。スナックでアイスクリームを食べる。家に帰ると夫が待ち構えていて、どこに行っていたのか?(夫の)学部長との会食の約束だった。アリスは忘れていたのだ。ふて腐れて「癌ならよかった」夫「よせよ」と慌てて制止する。

 アリス老人ホームを見学。ホームの老人たちの実態を見て複雑な心境になる。

 アリス、パソコンに向かって、
「ハイ! アリス。私はあなたよ。あなたが質問に答えられなくなったら、次の階段に進むべき時よ。一番上の引き出しのビンの錠剤を全部飲んで、横になって眠る。必ず全部飲むのよ。」しかし、アリスはこれを書いたことを忘れてしまうのだった。

<海辺を歩くアリス>
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 昼寝から目覚めると、腕に「記憶障害患者」の腕輪をしている。海岸の保養地にきている。ベランダに出て海を見る。在り日の想い出の世界に浸る。アリスは「言語学に己を賭けたこと、ギリシャ旅行や数々の外国旅行の思い出、母と姉の事故のこと、子育てと仕事で忙しかったこと=自己の人生に思いを馳せる。夫ジヨン「君は貪欲だった。全てを同時に求めた。」アリス「それが私。その方法が好き」来年、あなたが長期休暇をとって旅行するのはどう?私が私でいられる最後の夏よ。

<アリス一家の若い頃>
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 自宅でスマホに誕生日・住んでいる場所・子どもの名前等を繰り返して打っているアリス子どもたちの幼い頃のアルバム、思いに耽る。家のトイレがわからなくて楚々をする。どうしょうもない顔で立ち尽くす。

 末娘のリディアと海岸を散歩する。アリス「アナの赤ちゃんとトムが卒業する姿を見たい。あなたは大学に行って、演劇の単位を取りなさい。俳優でやって行けなくなっても教師でやって行けるでしょう。」リディア「私がやりたいのは演劇よ。自分を信じて挑戦したい。」
アリス、リディアの日記を読んで、リディアから怒られる。後、リディアから謝罪を受ける。「ママが私のプライバシーを侵害した。それでわたしは怒った。腹を立てたことを取り消すね。ごめんね。」アリス「私こそ。でも何も覚えていないわ」「ママ、今どんな様子?」「いい日もあれば悪い日もある。悪い日は自分が誰だかわからなくなる。」「私は常に知性によって、自己を規定してきた。言語や明確な表現で。今は目の前にぶら下がっている言葉に手が届かない感じ。次は何を失うのかしら」リディア、ママに自分の日記をプレゼントすることで和解する。三人の姉妹(きょうだい)の中では妹のリディアの人間性がよく描かれている。

<リディアの演劇公演>
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リディアの演劇公演が行われる。家族全員見に行く。チェーホフの有名な劇の朗読。スタンディングオベーションを受けるほど観客の喝采を受ける。リディアの演劇に対する熱意と才能は将来を感じさせる。

アリスは「認知症介護者」の会議でスピーチをすることになった。準備をするアリス。パソコンでリディアにスピーチの原稿を読む。リディア「もっと、個人的な話の方が良いと思う。皆が知りたいのはママの気持ち、この病気は何なのかよ。」

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<アリスの講演>
 私の人生は記憶に満ちています。記憶は私の最も大切な宝――夫と出会った夜、自分が書いた教科書を始めて手にした日、子どもが生まれ、友人が出来、世界を旅した。私が人生で蓄えた総てが、努力して得た総てが剥ぎ取られてゆくのです。地獄です。もっと悪くなる。
 今の私の最大の願いは、私の子どもたちが、私のような状況に陥らないことです。私はまだ生きています。心から愛する人がいて、やってみたいこともある。物を忘れてしまう自分に腹が立つけれど、喜びと幸福に満ちた瞬間が今もあるのです。私が苦しんでいると思わないで。苦しんではいません。闘っているのです。世界の一部であろうとして、かつてそうだった自分であろうとして。だから、瞬間を生きています。それが私に出来る全て。“なくす技が上達しても、自分を責めないで。今日のこの記憶は持ち続けたい。失われることは分かっています。でも今ここで話していることは大きな意味を持つのです。かつて私が言語学に情熱を燃やしたように意味を持つのです。この機会をありがとう。かけがいのないものです。
本当にありがとう。 

会場の観客の拍手を受ける。何人の人が泣いていた。言語学者としての自尊心と尊厳を
守り、人間の意識の崩壊と闘うアリスの具体的なメッセージに感動するからです。アルツハイマーとは意識の消滅の病気です。意識の消滅とはアリスみたいな知性に情熱を燃やしてきた人間にとって耐え難いことです。人間の否定を意味します。
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<キャスト>
ジュリアン・ムーア(アリス)、ジョン(アレック・ボールドウィン)
リディア(クリステン・スチュワート)、アナ(ケイト・ボスワース)
<スタッフ>
監督・脚本リチャード・グラツァー、原作リサ・ジェノバ、撮影ドニ・ルノアール、
音楽イラン・エシュケリ
(音楽がいい。初めの曲はこの映画全体を表現しているような、劇的運命・悲劇・希望を盛り込んでいるかのようだ。
不安を醸し出すメロディー、ピアノのゆったりした調べ、悲しみの静かな曲、等主人公の心像風景の反映や情況を捉えた音楽が流れる)



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  1. 2018/09/05(水) 21:11:41|
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