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映画・美術・イタリア旅行の紀行文の紹介です。

『2018年映画』「菊とギロチン」(監、瀬々敬久。出、東出晶大、筧一郎、木竜麻生、韓英恵)7/18

『2018年映画』「菊とギロチン」(監督、瀬々敬久、木竜麻生、東出晶大、筧一郎)

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物語の舞台は、大正末期・関東大震災直後の日本。混沌とした社会情勢の中、時代は急速に不穏な空気が漂い始めた。大正ロマンやアナキズムの夢は、大杉栄の虐殺や大逆事件で圧殺されたか?

 「春三月 縊り残され 花に舞う」

 美は乱調にあり、と自由・反権力・愛に・生き虐殺されたアナキスト大杉栄は大正ロマン・の革命家として、今でも人気なのは何故か?蠱惑の永遠の革命家として虐殺されたからか?大杉栄に「永遠の絶対自由の殉教者」を夢見るのだろうか?
 
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 映画に登場するは、大杉の時代のアナキスト「ギロチン社」である。中心は中濱鐵(東出晶大)・古田大次郎(寛一郎)の二人。世の中を変えたいという志を持ちながら、資本家を強請って女遊びにうつつを抜かしているという、青春の真只中にいた。彼らは自由と反権力を誰よりも求めていた。だが、単なるチャランポランの風来坊に過ぎなかったのだろうか?

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 東京に女相撲の一座「玉岩興行」がやってくる。力自慢の女力士の中には、元遊女で在日朝鮮人の十勝川(韓英恵)や、新人力士の花菊(木竜麻生)がいた。花菊は貧しい農家の嫁であったが、夫の暴力に耐えかねて家出し、女相撲に加わったのだ。「強くなりたい。自分の力で生きて行きたい」と願う彼女は厳しい稽古を重ねてゆく。花菊演じる木竜麻生の可憐さ・初々しさは素晴らしい。

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十勝川の韓英恵は韓国人の差別に耐え抜く内面の強さをうまく表していた。女相撲の一行と若きアナキスト「ギロチン社」が交じり合うことで、ドラマは発展する。

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 「差別のない世界で自由に生きたい」この純粋な願いは、中濱と十勝川、古田と花菊を惹かれあい結びつけてゆくが、厳しい現実が彼らの前に立ちはだかる。

 1910年、大逆事件。天皇暗殺を企てたという冤罪で幸徳秋水・菅野すが等の社会主義者・無政府主義者を逮捕、翌年に12名を虐殺し、世を震撼させた事件。
 1923年9月、 関東大震災、震災後の流言飛語により、自警団などが朝鮮人・中国人を多数殺害。
 1923年9月、甘粕事件(大杉栄・伊藤野枝・橘宗一が甘粕憲兵大尉によって殺害される。)
 1923年~26年、ギロチン社中濱・古田らは大杉の仇を撃とうとするが失敗、逮捕後死刑。

(映画では震災後の「朝鮮人虐殺」を、1917年のロシア革命と関連する翌年の日本軍の「シベリア出兵」と結びつけて解釈している。シベリア出兵で革命軍に苦い思いを受けた日本軍が帰国後、在郷軍人となって震災時の自警団を形成し、その恨みから朝鮮人虐殺に向かったと。この解釈に初めてお目にかかったがどうなのか?)

 乱世としての大正期、女相撲とアナキストとの結合は様々な夢を抱かせる。女相撲は真っ当な相撲興行を目指したが、一座の親方・興行する町の有力者・監視する警察と在郷軍人会といった、女相撲を囲む社会の構図に取り囲まれていた。しかし、土俵は苦しい現実からの
脱出出来る唯一の晴れの舞台なのだ。強くなることが、自分の力で生きることの唯一の道なのだと、必死に稽古に励む女相撲。彼女たちは貧しい農民の娘だったり、夫の暴力に耐えかねて逃げてきた嫁だったり、元遊女だったりだが、それに負けまいと必死に稽古に励んでいた。
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 だが、ギロチン社の男たちは夢想を追うが、現実にはだらしなくテロを計画するが官憲にあっけなく捕まり虐殺されてしまう。事実は以上のように終わってゆくが、映画「菊とギロチン」の世界は、枠を超えて無限の世界にはみ出している。「女相撲」の内容を丁寧に描いている。砂浜での全員の踊りのシーンは素晴らしい。在日の十勝川が在郷軍人たちに「天皇陛下、バンザイ!」と言えと拷問にあって、さんざん殴られてとうとう、「バンザイ」を叫ぶシーン。私は見ていて泣けてきた。
 「菊とギロチン」は映画の枠を超えて、大正のロマンとアナキズムが面白いと予感させる作品である。 



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  1. 2018/07/18(水) 10:58:01|
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