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映画・美術・イタリア旅行の紀行文の紹介です。

『2018年映画』「花筐」(原作檀一雄、監督大林宜彦) 1/8

『2018年映画』「花筐」(原作、檀一雄。監督大林宜彦。 1/8
         出演、窪塚俊介・満島真之介・長塚圭史・常盤貴子
           
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尾道三部作(「時をかける少女」「転校生」「さびしんぼう」)で熱狂的なファンを集めた大林宜彦の作品。40年前に監督は脚本を書きあげ映画化に臨んだが中断。(日本がバブル期に向かって行く時期でタイミングが合わない)戦争の影迫る昨今、病魔に侵された監督が渾身の力を込めて作品を完成した。戦争がいつ突発してもおかしくない情況への危機感からの作品化であり、遺書としての意味を持つと思う。

原作は檀一雄、昭和12年日中戦争勃発の年に発表、檀自身戦地へと赴いた年である。大学に通う3人の若者・未亡人の叔母と肺を病む姪・その友人の少女たちの青春群像劇。時間を大林監督が記憶する昭和16年(太平洋戦争勃発の年)、舞台を唐津に設定し、自分の命さえ自由にならない時代を生きる若者たちの凄まじい青春を描いた。

昭和16年にアムステルダムの両親の元を離れ、唐津に住む叔母(常盤貴子)の家に身を寄せる17歳の榊山少年(窪塚俊彦)。彼を取り巻く雄々しい鵜飼(満島真之介)修行僧のような吉良(長塚圭史)道化の阿蘇(柄本時生)らの刺激を受け、肺病を病む美しい従妹の美那(矢作穂香)に魅かれる。美那の友達、あきねや千歳も加わって―少年少女たちは青春を謳歌するが、戦争の足音が迫っていた。

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学校の窓からは海が広がり、教室の中を桜の花びらが舞う。庭での主人公たちが語らう背景に巨大な月が現れ、その前衛的な風景は大林宜彦のファンタジックな世界を構成する。最大の映像美は、作品の舞台となった「唐津くんち」の曳山祭りのシーンだ。画面を覆い尽くす巨大な月、人物の背景に輝く星など人工的な幻想美だ。

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思春期の若者たちが生きることや人生の意味を考える姿は真摯で無垢だ。また、若者の性の目覚めを、美しい叔母や肺病病みの美少女、女友達との”不良“と称する遊びや同性愛を匂わせた交流の中に漂わせた。題名の花筐(はながたみ)(花を入れる籠)は能楽の作品世界――昔、皇子時代に愛された女御が狂女となって恋狂い、形見の花筐を証拠に天皇に再会して愛を遂げる――のように愛・恋慕の狂乱を作品の魂としておき、中原中也の詩の朗読、バッハの無伴奏チェロソナタが作品全編にわたって鳴り響く。

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作品を貫くものは、終始漂う戦争への不安!間もなく起こる戦争で自分たちは若い命を失う、自分が慕う人が戦場で命を失うという痛切な思いである。「青春は、戦争の消耗品じゃない」という痛切な叫び!病魔と闘う大林宣彦の、戦争に散っていった若者たちへの鎮魂歌であり、いつ戦争が始まってもおかしくない現代への遺書である。


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  1. 2018/01/08(月) 16:17:31|
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