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『2017年映画』「三度目の殺人」(監是枝裕和、出福山雅治、別所広司、広瀬すず 9/17

『2017年映画』「三度目の殺人」(○監是枝裕和、○出福山雅治、役所広司、広瀬すず、
                吉田鋼太郎、斎藤由貴、満島真之介)9/17

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 事件の概要は被告人三隅高司(58)(役所広司)、容疑は強盗殺人と遺体損壊。被害者は三隅を解雇した食品会社の社長山中、河川敷で頭をスパナで打たれ絞殺され死亡。数十万円が入った財布が盗まれガソリンで死体は焼かれた。三隅はギャンブルで借金を作り金に困っていた。三隅は三十年前、故郷の北海道で借金取り二人を殺し無期懲役を受け三十年服役して仮釈放の身、今度は間違いなく死刑だろう。
 弁護を引き受けたのがやり手の弁護士重森(48)(福山雅治)、死刑を回避して無期懲役を狙う。真実はどうであれ法廷で減刑を勝ち取ればいいという冷徹クールな仕事人間。ところが三隅の証言が接見の度に二転三転して翻弄されてゆく。恐るべき役所広司の怪優振り!弁護士(福山雅治)対犯人(役所広司)との対決が、まるで怪優役所広司の掌(たなごころ)の上で玩(もてあそ)ばれるような錯覚を感じるのだ。いや、福山だけでなく監督も他の演技者も作品全体が巻き込まれてゆく感じなのだ。

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この殺人事件の裁判劇のキーポイントは法廷ではなく、接見室である。福山雅治と役所広司との人間対決である。7回の接見室のシーンの中で3回目の時、三隅が重森に「手を見せて下さい」という。福山が嫌そうな顔になるような不気味な雰囲気で迫る役所広司。ガラス越しの手合わせシーンによって役所広司なる存在がドラマ全体の守護神のような位置になるのだ。犯人は重森をのみ込む。重森は悩み惑い揺らいでゆく。「本当に殺したのか?どんな気持ちで殺したのか?」事件の根本的なところが揺らいでいく。作品を見ている我々もこいつは本当にやったのか?彼は死刑に値するのか?と半信半疑になってゆく。最後の接見の時、犯人と弁護士のふたりの顔がガラスの反射で重なって見えるのは何の象徴か?

 犯人が週刊誌のインタビューで「保険金目当てで命を奪った。社長の妻美津江(斉藤由貴)から頼まれた」という衝撃的なリークが告げられる。妻との男女関係も匂わせている。もしそれが事実なら主犯は妻山中美津江(斉藤由貴)という事になり、彼の罪は軽くなるかもしれない。問題はその証拠だ。事実関係の調査のために犯人のアパートに重森弁護士は行く。大家の証言が衝撃的だった。「足に障害のある女子高校生咲江(広瀬すず)がよく遊びに来ていた。」足に障害のある女子高校生といえば映画に登場している者では被害者の娘が考えられる。これはどういうことか?

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 公判に入った時、咲江が弁護士を訪ねてきた。「三隅が父を殺したのは自分のためだ」それを法廷で証言したいという衝撃的な発言!しかも、咲江は実の父親から性的暴行を受けていた!もしそれが事実なら、三隅は咲江を救うために山中を殺したのか?「金目当て」という動機を怪しんでいた重森は、本当の動機のように思えてきた。しかも三隅には犯行当時六歳の娘がいたのだ。咲江に自分の娘を重ねて義憤にかられたのかも知れない。 「裁いたのか、救ったのか、、、」 同時に重森は「咲江が本当の真犯人かも知れない」という可能性を思い浮かべた。咲江の気持ちを忖度して犯行に及んだのか?

 弁護側でもうひとつ問題になっていたことは、解雇した人間の呼び出しで山中が何故夜間河川敷に行ったのか?という問題。(自分の娘からの連絡ならば可能だが)呼び出しに何故山中が応じたのかの追求に三隅は「食品偽装」の問題をいう。会社が赤字続きであり、経営維持のために安い食品の「偽造」をやった。その連絡のためだという。保険金目当ての殺人ではないことになる?話しは二転三転する。重森に閃くものがあった。「裁こうとしたのですか?あの母親を。夫と娘の事を見て見ないふりをしていたから。」、、、長い沈黙の末、三隅は口を開いた。
「重森さん」
「いや、どうせ信じてもらえない」
「話して下さいよ、何なのですか?」
「嘘だったんですよ」
「嘘?」
「私は河川敷には行っていません。本当は私、殺していないんです。
きっぱりと断言する三隅。
「いや、どうして今頃。何故最初に言わなかったのですか」
「言いましたよ。刑事さんにも検事さんにも前の弁護士さんにも」
「でも嘘をつくなって。認めれば死刑にならないって」

 重森はパニックになった。何が真実で、何が嘘なのか?三隅に強い意志みたいなものを感じた。咲江を守ろうとしている。咲江が疑われないように、咲江が法廷で暴行されたことを暴かれて傷つかないように、三隅は全力尽している。自分のせいで不幸になった娘のことを想い守れなかった娘の代わりに咲江を守ろうとしているんだ。同じく娘を持つ重森にもわかる気がした。もし、自白を覆して犯人であることを否認すれば死刑になる。恐ろしく重大な決断を三隅はしているのだ。身体が震える。「いいんですね?本当に」「はい」と三隅はうなずいて笑みを浮かべた。

 三隅は犯人ではないという証拠はない。仲間の弁護士たちは皆反対したが、重森は三隅の主張を押し通した。「真実はどうであれ裁判に勝てればいい」というかつての信条の姿はどこにもなかった。
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 是枝裕和監督が福山雅治を主演にした映画では、福山がエリートの仕事人間として登場する。最も女性にもてるイケメンの外観の影に隠れたエゴイズムや非人間性が映画で暴かれ、ひとりの人間として成長する姿に観客は感動する。「そして父になる」(13)この度の「三度目の殺人」(17)がそうだ。是枝作品を見て作品創造の核となっていると思った。
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 「三度目」とは何か?難しい。作品が回答を出さず、いかようにも解釈出来るようになっている。「三度目の殺人」とは誤審や冤罪の司法システムのことだというのも一つの回答ではないか。



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  1. 2017/09/17(日) 21:53:48|
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