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『2017年映画』「ヒトラーへの285枚の葉書」(監バンサン・ペレ―ズ、出エマ・トンプソン)7/26

『2017年映画』「ヒトラーへの285枚の葉書」(監督バンサン・ペレ―ズ。 7/26
原作「ベルリンに1人で死す」(ハンス・ファラダ)、ゲシュタポの文書記録から終戦直後にハンス・ファラダが書き上げた遺作。
                 主演エマ・トンプソン。ブレンダン・グリーソン。ダニエル・ブリュール。)

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2016年制作の独・仏・英の映画作品。独の作家ハンス・ファラダ(1893-1947)が終戦の翌46年に書き上げた「ベルリンに一人で死す」の映画化。ゲシュタポの文書記録から一人のドイツ市民のナチスへの抵抗を書いた。原作者は47年に死去、70年前の作品を映画化したバンサン・ペレ―ズは、父スペイン人・母ドイツ人のフランスで活躍する俳優。自分の家族史にナチスは一人もいなく、大叔父がガス室で殺されいわばレジスタンスの立場に立つ家系に自信を持って取り組んだ。


森の中を一人の兵が逃げてきて撃たれて倒れる。目を開けて樹の茂みの間の大空を見つめているかのように死んでいる若きドイツ兵。
1940年6月、フランスに勝利し戦勝ムードに沸くベルリンの街。木材加工工場の職工長の夫婦オットーとアンナの元に一通の封書が届く。それは最愛のひとり息子ハンスの戦死という残酷な知らせだった。

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アンナは郵便を引きちぎって「こんなの!嘘よ!」と喚き、夫のオットーに向かって
「あなたと、戦争と、総統のせいよ!」罵る。オットーは静かに悲しみにくれる。
オットーの工場ではドイツのさらなる快進撃のために、生産性を挙げよと上司が叫んでいる。オットーは「自分は息子を国に差し出して死んだ。これ以上、何を差し出せばいいんだ!」という。
悲しみのどん底にくれる二人。


或る日工場から帰ったオットーは、「総統は私の息子を殺した。あなたの息子も殺されるだろう」という文章をはがきに書いた。しかも筆跡がバレないように何時間もかけて書いて、それを公共の施設のドアーに置いた。文面はヒットラーへの不満の文章になってゆく。
始めは黙って見ていた妻アンナも協力するようになった。
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オットーが書いた文面。

「自分を信じろ。ヒトラーを信じるな!」「戦争で労働者は死ぬ」「ドイツ国民よ、目覚めよ」
「この自由な報道を広めよう」「総統は私の息子を殺した。あなたの息子も殺される」
「人殺しヒトラーを止めろ!」「自由な報道!敵はヒトラーだ」「今の体制を倒そう!」
見つかったら死刑確実なヒトラー批判を二人はやってゆく。その数285枚、
一方、回収した葉書を手掛かりに犯人を追い詰めてゆくゲシュタポのエッシャリッヒ警部は犯人像を絞り込んでゆくが、ナチスの高官の屈辱的な仕打ちと高圧的な命令に彼の心に体制への疑念が生じてゆく。映画の進行ともに警部の心に突き刺さってゆく様子も描かれてゆく。警部と親衛隊の高官とのやりとりが、ベルリンの街が恐怖政治に染まってゆく象徴にもなっている。


オットーとアンナ夫婦のアパートには、郵便配達婦の女性が上階のユダヤ人老婦人に親切に食料などを届けたりしている。が、その夫はギャンブル三昧のワルで住人たちを見張っていて密告するような男だ。ユダヤ老婦人が留守の時、ワルは盗みに入るが、下の階の親子がやってきて金目の物を取り上げてしまう。親子はナチ党員だった。戻ってきたユダヤの老婦人はアンナに一時匿われる。ユダヤ人への差別が激しくなったので、下の階の判事が老婦人を匿ったりする。
獲物をナチ党員の親子に奪われたギャンブル三昧のワルは、腹いせにゲシュタポに密告する。ゲシュタポの捜索が始まる。アパート全体に異様な緊張感が走る。ゲシュタポは判事の部屋に来るが、判事の抗議を無視して室内を捜索する。階級的には判事の方が上なのに耳を貸さない。ナチスに関係するかどうかで上下関係が決まることを表している。又、ゲシュタポの一人は子供の頃、老婦人に可愛がられた青年だったが、今では無視され追いつめられたユダヤの老婦人は窓から飛び込んで死んでしまう。
主人公の住むアパートの住人たちに押し寄せるファシズムと暴力政治の様子がよく描かれている。オットーはひたすら抗議のメッセージを書いて施設のドアーに置いていた。


オットーとアンナ夫婦は捕まり、覚悟の二人は自供する。ギロチンに掛けられる。
ブレンダン・グリーソンとエマ・トンプソンの夫婦の表情とか何気ない会話が良かったが、それに向かいあうダニエル・ブリュールの
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警部が良かった。捜査の過程で本人の覚悟を知り、カードに込められたメッセージを読む。ラストシーンで、彼らのメッセージを全部読んだ警部は、窓からカードをベルリンの街に投げ捨てて自殺する、ところで映画は終わる。


ヒトラーの映画だとユダヤ人虐殺が主なテーマであるけれど、これはドイツの労働者の抵抗を描いた映画だ。レアリズ映画だけど、主役のエマ・トンプソンとブレンダン・グリーンの切羽詰まった演技が素晴らしい。警部役のダニエル・ブリュールの高官からの屈辱的な仕打ちと主人公たちの行為に心が動かされてゆく様子がいい。無駄のない緊迫した映画だ。戦争期のベルリンの街とドイツの庶民の様子がよく描かれている。
監督 バンサン・ペレ―ズ。
原作 ハンス・ファラダ(ベルリンに一人死す)
出演 アンナ(エマ・トンプソン)、オットー(ブレンダン・グリーソン)
警部(ダニエル・プリュール)




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  1. 2017/07/26(水) 20:44:18|
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