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『2017年映画』「ありがとう、トニ・エルドマン」(独映画、監マーレン・アレ) 7/10

『2017年映画』「ありがとう、トニ・エルドマン」(独映画、監・脚マーレン・アデ、 7/10

                           父ペーター・ジモニシェック、娘ザンドラ・ヒュラー

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2016年のカンヌを始めとしたヨーロッパ映画祭の話題となったドイツ映画。「父と娘」の交流・反発・愛情を描いた、ちょっと変てこな?奇想天外な映画が「ありがとう、トニ・エルドマン」だ。「父と娘」の物語を描きながら、人間にとって「真の幸福」とは何かを問い、ヨーロッパのみならず、世界が直面している――孤独、世代間の価値観のギャップ、搾取や社会格差――などをさらりと反映させた傑作だ!
アメリカ公開の際に、引退表明していたジャック・ニコルソンが本作に惚れ込んで、撤回してハリウッド・リメイク版で父親役のエルドマンを演じるという。

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*―物語―
<その一>
悪ふざけが大好きなヴィンフリートは、存在しない架空の弟“トニ”になりきって変装し、荷物を届けた配達員を驚かして喜んでいる。彼は半ば引退した60代の元音楽教師、妻とは離婚し、年老いた母が近くに住んでいる。(年老いた母と同居しないところが個人主義の確立か?)

しかし、最近浮かないことが多い。ピアノ教室の生徒からは辞めたいと告げられ、年老いた母も、いつも一緒にいる老犬ヴィリーも何故か元気がない。コンサルタント会社で海外を飛び回る*「バリキャリ」の娘イネスは、勤務地のブカレストから久しぶりに帰って来たが、仕事に追われて携帯で電話ばかりしている。
*「バリキャリ」=バリバリのキャリアウーマンのこと。

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心の支えだった愛犬の死を契機に、突然ヴィンフリートはイネスが働くブカレストの会社を訪れた。しかし、大手石油企業の契約延長がかかった重要なプロジェクトに関わっているイネスは、上海支社への転勤という夢を叶えるためにも忙しく、父に構わっている暇はない。
が、アメリカ大使館のレセプションに招待してしまう。
財界人たちセレブが集うレセプション。スーツ姿のイネスが取引先の役員に働きかけている。しかし、同席していた役員の妻の相手を任され、なかなか仕事の話に行かない。あせるイネスは役員の機嫌を損ねてしまう。
ラフな普段着の父は、レセプションから浮き上がって居心地が悪そうだ。娘の様子を心配そうに見ていた。

イネスのマンションで、父は「ここにいて幸せか?」と聞く。そんな問いに答える間もなくイネスは取引先の妻の接待に出かけてゆく。帰宅してもすぐパソコンに向かうイネス。「夜も夫妻を接待するから、その前に、ひと眠りするわ」と寝てしまう。
朝。ヴィンフリートは、ドイツに帰る前に起こしに行く。「今何時!?最悪!4回も着信が!
プレゼンは月曜日よ。顧客との約束をすっぽかしちゃったわ!なぜ起こしてくれないの?」泣きながら暴れるイネス。

「ほっとけないよ」「、、、心配しないで」ドイツに帰っていく父。イネスは、何故か涙が溢れながら見送った。

<その二>
レストランでイネスは友人たちと女子会。皆、日頃の愚痴をこぼしている。それぞれの週末の悲惨な話が飛び出すと、イネスは堰(せき)を切ったように「私も人生で最悪な週末だった。父が何の連絡もなく突然現れたのよ」と一気に話す。すると、突然背後から「ご婦人たち、シャンパンはいかが?」ダサいスーツに、長髪のカツラ、出っ歯の入れ歯をした父・ヴィンフリートが現れる。動揺するイネスに向かい「私はトニ・エルドマンです。はじめまして」と挨拶、人生についてのコーチチングをしているビジネスマンだという彼は、一通りの会話を楽しむとリムジンに乗って夜の街に去って行った。

それから、前触れもなくイネスの前に“トニ・エルドマン”は度々現れた。
上司と意見が食い違い、会社の屋上で言い争いをしている時に、車のサイレンを強烈に鳴らして現れた!又、職場の彼氏も同席しているパーティーに現れ、彼氏の家庭環境を探り、冗談を言った。「私はドイツ大使です」と言い、イネスを秘書だと紹介する。挙句に危ないカーパーティやクラブまでついてゆき、イネスを守ろうとする。

「娘にとって父とは?」少女期の“親密から反発“と様々のヴァリエイションがある。ぼさぼさな白髪頭に突き出た腹。カツラや付け歯をして、しばしば変装をする。そんな父親に反撥して、30代後半の彼女はキャリア志向の人生を送っている。とにかくイネスは忙しい。突然の父親の訪問は煩わしい。が、風采の上がらぬ父親を嫌っているかというとそうでもなく、アメリカ大使館のレセプションに誘うのだ。彼女は人間的に父親を否定しているのではない。父親の方では忙しいキャリア志向の娘の人生が心配でしょうがない。イネスが人間的におかしいと映像的に見せる場面は、同僚の男とのセックス・シーンだ。ビジネスに差し支えるからと、男にマスタベーションをさせる。ひどく病んでいる。性愛も仕事の効率化のために管理するのか。父親は娘の人生に押しかけてゆく。それが一段と激しくなるのが、トニ・エルドマンと名乗って怪人的ストーカーを繰り返すところからだ。物語は忙しいイネスに悪ふざけを繰り返すエルドマンの愛情は、イネスの自己回復へどの様な効果があったろうか?

帰りの車で疲れ果て寝ているイネスを横目に、知り合いの婦人のホームパーティーに立ち寄る。そこで、エルドマンのオルガンの伴奏で、イネスは<ホイットニー・ヒューストン>の「GREATEST LOVE OF ALL 」を唄う。
(あなたが夢見ていた場所が、寂しい場所になってしまったら、愛があなたを力づけてくれる)イネスの力強い熱唱は、その場にいた全員の心を奪った!

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エルドマンのメッセージ――自分を大切に生きて欲しい/ 一緒に歌った幼い頃に戻ろうよ

誕生パーティーで、自分の殻を破るためのヌード・パーティーを目論む!

ブルガリアの精霊伝説――クケリ(ブルガリアの祭りの際に着用される被り物)=を被ったエルドマンがイネスの悪霊を追い払う。春先にクケリ(日本の“なまはげ“みたいなもの)を被って悪霊を追い払い、家族の健康を祈った。

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<監督・脚本>「マーレン・アデ」(1976~ドイツ生まれ。
     「恋愛社会学のススメ」(2011)
「トニ・エルドマン」(2016)ではカンヌ映画祭・ベルリン映画祭でグランプリ
<主演>「エルドマン(ペーター・ジモニシェック)」1946~ オーストリア生まれ、マルガレーテ・フォン・トロッタ監督の「三人姉妹」(89)に出演。テレビに多く出演。
    「イネス (ザンドラ・ヒゅラー)」1978~ドイツ生まれ。舞台女優。
     06年の「レクイエムーミカエラの肖像」でベルリン映画祭(女優賞)。ドイツを代表する女優。



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  1. 2017/07/10(月) 21:24:46|
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