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『2017年映画』「セールスマン」(イラン映画、<別離>のファルハディ監督) 6/16

『2017年映画』「セールスマン」(イラン映画/監督アスガー・ファルハディ 
音楽サッタル・オラキ撮影ホセイン・ジャファアリアン                                              出演、シャハブ・ホセイニ(夫)タラネ・アリシュスティ(妻)
                         ババク・カリミ(男)   6/16

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[89回アカデミー賞外国映画賞、69回カンヌ映画祭脚本・主演男優の2賞に輝く。]

トランプ大統領のシリア難民拒否とイラク・イラン等中東7ヵ国からの入国禁止に抗議して、イランのファルハディ監督等はアカデミー受賞式を拒否した。

2012年公開のファルハディ監督の<別離>は強烈な記憶に残る作品である。ベルリン映画祭で男女共に銀熊賞(男優・女優)に輝き、イラン映画の存在を世界にアッピールした。
それから、数年後の2017年に「セールスマン」で再び世に問う。

イランは1979年のホメイニのイスラム革命で現代国家として世界に登場した。そのイスラム原理主義は「イスラム頑固主義」の代名詞と異国の僕らは皮肉っていた。イランはイスラム教を国の戒律とした国である。しかし、ファルハディの映画を見ると、古い戒律に生きようとする庶民と民主化された自由な生き方を求めるインテリとのせめぎ合いがテーマの様に感じる。インテリは西欧のそれと変わらぬ自由な近代的精神の持ち主のように見える。主人公のインテリがイラン社会でどう生きるか、イランをどういう国にしたいと考えているかが作品から読み取れるか?
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映画「セールスマン」では高校教師の夫が妻と共に小さな劇団をやっている。彼らが取り組んでいるアサ―・ミラーの「セールスマンの死」が劇中劇としてうまく使われている。

現代イランの問題を重層的にからませて映画は展開する。現代イランの住宅問題―映画の冒頭、爆撃に会ったかと錯覚するようなビルの崩壊と逃げ惑う人々。建設ラッシュで古いビルを壊す。住民を追い立てるためにビルを破壊する。その騒動で住まいを追われた主人公夫婦は劇団のボス的存在ババクの紹介で、マンションの高層に部屋を借りる。エレベターがないので上り下りが大変だ。その部屋は娼婦が借りていて荷物が放置されたままだった。訳アリの部屋でためらいもあったが、急場のしのぎにやむを得ずその部屋を借りた。
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夫が留守の時に妻が浴室で侵入者に性的暴行を受ける。演出の上手いところは暴行シーンを一切写さないところだ。観客は想像するしかない。穏やかだった夫婦の関係が一変する。妻は人間が壊れたようになり、夫はそのことを深く理解しない。夫は警察へ届けようというが、妻は頑強に拒む。イスラム社会の戒律・風習の男尊女卑に縛られる。事件は夫婦の関係を壊してゆく。夫は犯人探しに熱中し、<復讐>心に捉われてゆく。妻は益々自己の中に閉じこもってゆく。
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ラストの30分が圧巻だ。復讐心にかられた夫は残された小型トラックから犯人に辿りつく。犯人は娼婦の客で庶民の初老の男。被害者と加害者の対立、女性の性を忘れた男の復讐心、インテリと庶民、しかし、加害者も庶民としての家族と生活があった。結末はどうなるか?

劇中劇「セールスマンの死」
荘厳な音楽とシェィクスピア劇の舞台のような装置の部屋。劇中劇「セールスマンの死」のラストシーン。かつて敏腕のセールスマンだった主人公が死んで棺に横たわっている。その彼に映画の加害者の老人の死を重ねる。(犯行の責任としての裁きと死と、劇の主人公のドラマを重ねる)

だが、映画の後半感じた「イライラ感」はどこから来るのか?何故か解放去れない束縛感というもの、イランの閉塞感と言われるところから来ているのか?閉塞感の坩堝に追い込む監督の演出か?明日のイランはどういう社会になるのか?いや、監督はどういうイラン社会を作りたいのか?ーその問いは私たちにとってもどういう明日の世界を作りたいのか、と私たちにも帰って来る問題ではないか?明日のイランが描けない!明日の日本が描けない!、、、世界的な閉塞感からきているのだろうか?それが問題ではないか?





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  1. 2017/06/15(木) 16:56:17|
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