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『2017年の映画』「午後8時の訪問者」(ダルデンヌ兄弟監督、アデル・エネル出演)4/14

『2017年映画』「午後8時の訪問者」(カンヌパルムドール大賞2度目の受賞ダルデンヌ兄弟監督
                     セザール賞受賞のアデル・エネル主演)


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今やカンヌ映画祭入賞常連のベルギーのダルデンヌ兄弟監督(1951年~と1954年生まれ)の作品は、現代ヨーロッパ問題を考察する時彼らを外しては考えられない。映画は深いところで情況を反映し交差している。現代ヨーロッパの難民・移民問題、貧困・差別問題、また、女性差別からの自立、己の医師としての自立、、などの問題点を浮き彫りにする。
彼らは08年「ロルナの祈り」でアルバニアからの移民問題を取り上げ、11年「少年と自転車」で育児放棄と里親問題や少年の自立を描き、14年の「サンドラの週末」では女性労働者の復職への闘いと同僚との団結を描いた。「午後8時の訪問者」では今ヨーロッパを覆い尽くす移民排斥のうねりに果敢に挑戦した問題作!

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<物語>
小さな診療所。若い女医ジェニーがてきぱきと働いている。まもなく大きな病院の好待遇の職が待っている。今は老医者(父姓的役割)の代わりに小さな診療所で働いている。診察時間も終わり、医科大学から来た若い男性の研修医にカルテの作成や大学病院へ送る診断書について指示。今度、勤める病院からの歓迎パーティーに出かける用意をしている時に、突然に鳴るドアーホンのベル。診察時間はとっくに過ぎていた。研修医が出ようとすると、それを制して「あなた、患者に寄り添い過ぎよ」と高圧的な態度で注意する。
翌日、警察が来て、診療所の近くで身元不明の黒人少女の遺体が発見されたという。午後8時過ぎにドアーホンを押している姿の監視カメラの少女こそ、遺体の彼女だった。少女の身元は不明。恐らく不法難民?このままでは墓に記す名さえ分からぬ。責任を感じた女医ジェニーは少女の顔写真を自分の携帯に残し、少女の名前を聞いてまわる。

「彼女の名前は?何故ドアーホンを押したのか?両親や家族は?どこから来たのか?何故殺されたのか?、、、」

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ジェニーは死体現場に行ってみた。往診先で写真を見せて訪ねるが手掛かりがつかめない。ある時、患者の一人が診察中に写真を見せると心拍数が上がったので疑問をもって問い詰めてゆく。患者は誰にも内緒にして欲しいと言ってある事実を告げる。そこから綻(ほころ)びがほどけるように展開してゆくが、ジェニーは襲われて「余り嗅ぎまわるな!」と脅迫される。
警察から少女の名がわかった、危ない事をするなと注意される。少女は不法難民だった。ヨーロッパに流れついて家族もわからないという。
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<ジェニーの行動の意味?>
少女を探し求めるジェニーの行動は医者としての責任感を超えた殉教者のようだ。何故そのような行動をするのか?その問いこそ意味を持つと映画は言っている。多くの者が無関心になっている難民の問題、現在の風潮に逆らって、彼女は関わっていく。医者としての自立を賭けて。人間としての尊厳をかけてだろう。映画のラストシーンで亡き黒人少女の姉との抱擁は感動的だ。

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「小さな診療所」はどのような意味を持つのか?世界におけるー欧州における難民への窓口の象徴である。ドアーを開けなかったことは、難民・移民に対して現代の欧州の態度を寓意的に問題提起している。フランスやベルギーで起きたテロ事件は衝撃を与えた。「テロリストは海外からやって来るのではない。自国の中から生まれる。」英国のEU離脱、トランプ米大統領のオルタナ右翼は反・移民、米国第一主義などは、自国さえよければいいという考えを広め、欧州を弱体化している。
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二度の世界大戦から、欧州は再び戦争を起さないためにはどうすればいいのか、という基本的な合意のもとに一つの国=EUを作ったはずです。自由・平等・女性の権利など欧州の守ってきた基本的理念が今、揺らいでいる。良心的な映画作家たちは危機感を募らせている。

<ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟>1951・1954~ベルギーの映画監督
1999年「ロゼッタ」でカンヌ・パルムドール大賞。02年「息子のまなざし」、05年「ある子ども」で2度目のパルムドール大賞。
08年「ロルナの祈り」で脚本賞。11年「少年と自転車」でカンヌ大賞。
カンヌ映画祭の常連で常に入賞。ヨーロッパ映画界の大御所。欧州の問題点に常に切り込んでいる。
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  1. 2017/04/14(金) 17:20:24|
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