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『2017年映画』「わたしは、ダニエル・ブレイク」(監督ケン・ローチ) 4/9

『2017年映画』「わたしは、ダニエル・ブレイク」(ケン・ローチ監督、
                        出演デイヴ・ジョ―ンズ)

ダニエル.ブレイク

英国の北東部のある町に住むダニエル・ブレイクは大工仕事に誇りを持ち、最愛の妻を亡くしてからも規則正しい生活を送っていた。しかし、彼は突然の心臓病で医者から仕事を止められてしまう。国の援助を受けようとするが、理不尽で入り組んだ制度が立ちふさがってダニエルは必要な援助を受けることが出来ない。英国は「ゆりかごから墓場まで」のスローガンの福祉国家を目指していたのではないか?と疑問が出て調べてみると、財政赤字削減を掲げた保守党キャメロン内閣が2010年から、緊縮財政政策(福祉・住宅・社会保障の大幅な削減)によって、英国は弱者にとって最も過酷な国になってしまったという。

ダニエル➁

ダニエルは休職手当を貰うとするが、申請をオンラインでしなければならず、パソコンを使えない彼は困ってしまう。一事が万事というわけだ。彼は「お役所仕事」の冷淡さ・非道さによって経済的にも精神的にも追い詰められてゆく。
悪戦苦闘するダニエルは、身寄りもなく2人の子どもを抱えて失業したケイティと出会う。

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ケイティは夫違いの2人の子どもを抱えたシングルマザー。家賃を払えず追い出され、ホームレスの保護施設に入っていたが、子どもが精神的にまいって紹介されたのが現在の交通不便な所。そこは空き部屋があり、*寝室税として生活保護費が減額されて生活は一層苦しくなった。生活保護の再申請のために行った行政で約束した時間に遅れた為に減額処分をかけると言われる。引っ越したばかりで道に迷ったと言っても行政は取り合わない。見かねたダニエルが抗議するが警備に一緒に追い出されてしまう。
*寝室税(福祉予算を減額するために空き部屋に税金をかけ、低所得向け住宅手当を減額する制度。貧困層からの反発が強い)

貧しい中での互いに慰めあい支え合うダニエルとケイティたち。しかし、厳しい現実が彼らを追い詰めてゆく。ケイティはあまりの空腹に耐えきれず貰ったばかりの缶詰を開けてスープを吸ってしまう。惨めになって泣いている彼女をダニエルは優しく慰める。
ケイティはスーパーで万引きを咎められる。生理用品をカバンに隠したのを見つかった。(フードサービスに生理用品がないかと尋ねて必要なのに寄付がないと言われたのだ。)
盗んだのが生理用品なのを見て支配人は見逃し、困ったことがあったらと電話番号を渡される。子どもが虐められるのが破れた靴のせいだとわかって、ケイティは決心して電話(売春)をかける。ダニエルが電話番号の紙切れを見て、店に乗り込んでケイティを説得するが他に金の入る当てがなく、彼女は拒絶する。

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ダニエルは「尊厳を失ったら終わりだ」といって、職業安定所の壁にペンキで「わたしは、ダニエル・ブレイク。犬ではない、、、」と書き込む。ダニエルの爆発だ!胸が締め付けられる。

これは英国だけの物語ではない。ムダの削減と効率化を求めて慇懃(いんぎん)無礼な排除へと行き着いた、高度の資本主義国の実体だ!貧困を救済する目的の機構が冷酷な切り捨て機関になっている現実!英国も日本も同じとは!引退宣言を撤回してのケン・ローチ監督怒りの映像!主人公ダニエルの強烈な尊厳の主張!隣人への優しさに感動した!

*≪ケン・ローチ≫(1936年~英国の映画監督。脚本家。)
50年にわたる監督人生、一貫として反権力、政治状況へのアクチャルな視点を貫く。労働者階級に焦点を当てた映画を多く作ってきた。前作「ジミー、野を駆ける伝説」(2014年)で引退を表明していたケン・ローチが英国の過酷な格差や貧困に黙っていられなくてこの作品を撮った。
私にとってケン・ローチ監督は、スペイン人民戦線革命を描いた「大地と自由」で忘れられない映画監督になった。
スペイン人民戦線は、1930年代の「知識人と労働者」との連帯の可能性を問う、知識人にとって優れて歴史的な事件であり、生き方を問われる問題提起であった。思想と自由の息吹きを感じさせ、スペイン独特の風情があった。思想的にも「急進的労働者運動」(サンジカリスム)・「無政府主義」「労働者統一党(トロッキズム)」「スターリンの共産党」などが割拠し互いにしのぎを削ったが、共産党が人民戦線の主導権を握った。
若き日のヘミングウェイやジョージ・オーウェル、ロバート・キャパが国際旅団に参加したが無惨にも敗退した。三者三様の戦後の生き方が意味を持つ。戦後に映画化された作品ではローチの「大地と自由」以外に、「誰が為に鐘は鳴る」「日曜日には鼠を殺せ」がある。


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  1. 2017/04/09(日) 18:49:58|
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