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『2017年映画』 「愚行録 ・補遺 」 3/17

『2017年映画』「<愚行録>補遺」 3/17

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*「愚行録」補遺
3月7日に取り上げた映画「愚行録」は新人監督石川慶の意欲作である。<補遺>として解説を整理します。

若手俳優たち――妻夫木聡、満島ひかり、小出恵介、臼田あさ美、市川由衣、松本若菜、中村倫也、真島秀和らによる青春群像劇の一面。それは有名私立大学を舞台に繰り広げられる、華やかな学園生活や交友関係。そして、もう一つは10年後に起きた卒業生(田向)一家殺人事件と同じ卒業生田中光子の育児放棄・愛児衰弱死事件。この二つの事件はどう絡み合っているか?
*田中光子(満島ひかり)兄、田中武志(妻夫木聡)田向浩樹(小出恵介)田向夫人友希恵(松本若菜)宮村淳子(臼田あさ美)

雑誌社記者である光子の兄田中が、迷宮入りになった一家殺人事件の取材に乗り出す。(雑誌社内では反対の空気が支配的だったが強引に)田中は田向夫妻の近所の評判から取材を進め、大学時代にゆきつく。物語は田中の取材(インタビュー)のシーンとある女性の独白とで映画は進行していく。取材を進めると田向夫妻の評判が人によって異なっていた。

例えば殺された田向武志は大手デベロッパーのエリートで人当たりも良く仕事が出来る人間だが、交際相手の親が自分の就職に有利になるかを計算しているところがある。女性関係も醜い噂やライバルの左遷についての闇のうわさもある。
田向夫人については美人で気品があるが、学生時代彼氏を盗られた今ではカフェのオーナーの宮村淳子は彼女を性格が悪いという。光子が利用されていた或ることを打ち明ける。(光子が田中の妹とは知らない)*

*名門私立大学のK大では、付属からの進学者(内部生)と大学に入学してきた(外部生)との間に隠然たる差別の壁があった。内部生は2代も3代も続くエリート層であり、外部生は簡単には入れない。悲惨な幼少期を送った光子は金持ちの男と結婚して幸福になりたいと夢みてK大に入学した。外部生だった田向夫人は光子を内部生に紹介した。美貌と気品で田向夫人は内部生の男に取り入り、光子を紹介することで君臨したのである。光子は体だけもてあそばれ捨てられた。田向夫人は次々に男を紹介した。光子は散々な目にあって果ては大学を中退した。

田向夫妻や淳子・光子たちのK大での青春は一見華やかなものだったが、羨望・嫉妬・駆け引き・欲望・見栄が渦巻き、恋・失恋・相手を捨てる等、青春期特有のドラマがあった。根底には、内部生対外部生の対立の壁が企業の学閥のように厳然とあった。

田中光子は少女時代から性的虐待を受け、家庭的にも暗く不幸な少女時代を過ごし、名門K大での青春も願っていた方向とは逆のネガティブな方向、、、大学を中退した。シングルマザーとなって、育児放棄・愛児衰弱死で鑑別所に留置されている。大学を中退した後の光子の10年間は何だったのか?彼女はどう生きたか?子どもの父は誰か?
兄の武志は何故事件を調べるのか?いや、何を調べているのか?

最初にバスのシーンで、兄の癖の悪さを見せて、兄妹の刑務所内での対面。ロマン・ポランスキー張りのポーランド国立映画大学の演出・撮影方法(監督、石川慶はポーランド国立映画大学出身)が面白い。無機質の乾いた映像美―刑務所の四方の白い壁が際立っている。映画のセットのような壁と、鉄格子が兄と妹を隔て対面している。「私、秘密大好き!」と満島の妹が怪しげに呟く。妹嬉しそうだ。近親相姦の匂いがする。田中光子は余りに可哀そうだ。悲惨な少女時代、K大学の学園生活で夢の青春を掴もうとして挫折。光子を軸とした物語が見え隠れする。そして、兄武志の存在、彼の記者としての行動はどう光子に関わってくるか?

映画の画像美が既存のものと全然違うのだ。それと、30代青年俳優の演出に今までと違った映画・ドラマの可能性を見た。


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  1. 2017/03/16(木) 22:50:40|
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