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『2017年映画』 「愚行録」(原作、貫井徳郎。監督、石川慶。出演妻夫木聡。満島ひかり。3/7

『2017年映画』「愚行録」(原作、貫井徳郎。監督、石川慶。撮監、ピオトル・ニエミイスキ
               (出、妻夫木聡。満島ひかり。小出恵介。臼田あさ美。
                  市川由衣。松本若菜。濱田マリ。平田満  3/7

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最近小説界や映画界で「イヤミス」と呼ばれる作品が話題を呼んでいる。読んで(見て)後味が悪いミステリーの作品。渚かなえ「告白」桐野夏生「グロテスク」佐野真一「東電OL殺人事件」などがある。この貫井徳郎監督の「愚行録」もその一つといえる。

日本中を震え上がらせた一家殺人事件。エリートの夫と美しい妻、可愛い子どもという理想的と思われて一家の想像を絶する殺人事件。いまだ未解決。週刊誌記者の田中(妻夫木聡)が調べてゆくと、エリート一家の理想的な人間像とはかけ離れた実像が浮かび上がる。

日常交わす何気ない会話や人のうわさ話、人間関係における秘められた羨望や嫉妬・見栄や駆け引き、、、原作者が「愚行」と名付けた人間性の闇が、ミステリアスなドラマと共に登場、人物たちの青春を彩っていた。殺人事件の背景に、映画の中心舞台を成す名門大学生たちの青春の陰影があった。

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映画の冒頭、バスの中座席で眠りこけている雑誌社記者田中(妻夫木聡)。車中の中年の男に立っている老婆を座らせるように注意され、田中立つ。バス停で降りた田中、足を引きずって歩く。車中の中年男気まずそう、、、バスが行ってから田中足が何でもなさそうに歩く。演技だったのだ。冒頭のワンカットで主人公の性分を見せ、映画の方向を暗示している。
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3歳の女児を育児放棄で衰弱死させ逮捕された妹光子(満島ひかり)に面会している兄の田中。周囲の壁が灰色の石で囲まれた留置所、異様な無機質な様子は作品全体の主調トーンで*あり、抒情とは無縁な作品であることを暗示している。一家殺人の犯人は誰か?記者田中が関係者のインタビューをしてゆく過程と、誰かわからない女が「お兄ちゃん」向かって語る話とが交互に散りばめられて映画は構成されてゆく。田中は殆ど喋らず相手に語らせる。

*(撮影監督=ピオトル・ニエミイスキ。監督=石川慶はポーランドの国立映画学校で学び、ニエミイスキは同窓。ポーランドコンビの演出・撮影は日本の映画レベルを超えた優れた映像美と構図を表している。)

殺害された夫・田向浩樹(小出恵介)は名門W大卒の大手ゼネコン・デベロッパーのエリート。男の中では仕事が出来る「頼れる男」と評判はいい。
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妻・(旧姓夏原)友希恵(松本若菜)は名門K大卒の美貌の才媛。気品があり優雅な貴婦人と言われていた。しかし、、、今は洒落たカフェのオーナー同級生宮村淳子(臼田あさ美)が、友希恵は「性格が悪い」と言う。夫田向についても醜い女性関係や同期の左遷にからむ暗い影をほのめかす。田向夫婦の表面の評判とは反対の実相を語る。華やかな大学時代何があったのか?
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田向夫人の出身名門大学K大では付属から進学してきた学生(内部生)と、大学に外部から入ってきた(外部生)者と隠微な差別があった。内部生は親子2代或いは3代~K大を卒業し、資産家のエリートが占めていた。外部生は内部生の固い結束に弾かれ、グループには入れなかったのだ。

田中光子は少女時代に父から性的虐待を受けていた。ある日の夜、妹の叫び声が聞こえた。気がついた時田中は父親に馬乗りになって殴りかかっていた。翌日から田中は家を出た。
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名門K大に入学した光子は家柄の良い金持ちの男と結婚して幸福になろうと胸を膨らませていた。内部生ではないけれど美貌と優雅な雰囲気から周りの期待を集めていた田向夫人は、「内部生」と付き合いたがっていた光子を次々と内部生の男に紹介した。しかし、光子は体だけもてあそばれ次々と捨てられてしまう。田向夫人は己の地位を保つ為に光子を貢物として利用していたと語るのは宮村(臼田あさ美)。
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付き合っていた男を田向夫人に盗られ、田向浩樹の元カレだった。それぞれ関係や利害が絡まり合い嫉妬、羨望がうごめいている。

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さて、それぞれの青年男女は青春の門を通過し人生という航路に旅立ったが、一家殺人殺しの犯人はだれだろうか?

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満島ひかりの演ずる「田中光子」、「私、秘密大好き!」と妖精のように駆け寄ってくるが、悲惨な少女期と夢見た青春とその裏側、愛児虐待と育児放棄で逮捕鑑別所の中、考えてみればもの凄い女の一生!これからどうなるのだろうか?
タイトルの「愚行録」とは何をさすのか?「愚かな行い」とは誰のどういう行為をさすのか?
登場人物たちそれぞれの行為を意味するのか?人間やっていることが「愚行なのだ」と。

監督、石川慶
ロマン・ポランスキーらを輩出したポーランド・国立映画大学で演出を学ぶ。
短編映画を作ってきたが、「愚行録」は長編デビュー作である。
同大学出身のP・二エミイスキを撮影監督に起用、映像美あふれる構図を作った。
満島ひかり、臼田あさ美、小出恵介などの演技力の可能性を引き出した。

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  1. 2017/03/07(火) 16:31:20|
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