私の見た映画・美術・

映画・美術・イタリア旅行の紀行文の紹介です。

『2冊の絵本』(いせひでこ) 

『美術/音楽/舞台/読書』「二冊の絵本(伊勢英子)」 6/15

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すてきな絵本を見つけた。伊勢英子の絵本、私が手に取ったのは絵本「大きな木のような人」、「ルリュ―ルおじさん」、エッセー「旅する絵描き」だった。水彩画の美しいこと!絵本を飾る豊かな絵のイメージが素晴らしいこと。私はたちまち魅了されてしまった。孫のT君への誕生日プレゼントを探していて偶然見つけたのだ。

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「大きな木のような人」(いせひでこ・講談社)
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舞台はパリ。題材は植物、四季折々の木や花や芽。パリには樹齢400年のアカシアが2本あるそうだ。画家伊勢英子はパリに滞在した折、大きな植物園に足を踏み入れた。木や花を描く<さえら>という幻の少女と出会う。<さえら>は悪戯っ子で植物園のあちこちに出没して庭師や職員をてこずらせる――いせさんの幻想だったかも知れません。

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植物園には、30年以上旅をし、世界中の木を研究してきた教授がいた。物語は<さえら>が教授との交流を通して、木や花――植物の世界を知ってゆく。中には400歳のアカシアや3300万年前の木の化石に出会ったりする。少女は春や夏の花や木々を絵に描く。
秋が来て少女は去り、植物園に冬が訪れた。子どもたちの声も聞こえないモノトーンの世界に変わっていった。

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教授は<さえら>が描いた春や夏の花たちの絵を、冬のモノトーンの植物園のあちこちに展示した。冬の植物園に集まった親子たちの前で、<さえら>の絵のことや植物について説明する教授。あちこちに<さえら>の絵が展示されていた。

*「ルリュ―ルおじさん」(いせひでこ・理論社)

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これもパリが舞台。植物好きな少女が大切にしていた図鑑をバラバラにしてしまった。こわれた本はどこへ持っていけばいいの?本屋さんには新しい植物図鑑がいっぱいあったが、「でもこの本をなおしたいの」

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少女はパリ中をさまよった。セーヌ河沿いの本屋さんに「そんなに大事な本なら、ルリュールのところへ行ってごらん」と言われた。「ルリュ―ルって本のお医者さんみたいな人?」少女は「ルリュ―ル」を訪ねてまたパリ中を探した。

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パリの街並みの水彩画がいい。建物、行き交う人、カフェで寛ぐ人、狭い小路、小さな広場。

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ある小路の家に、窓一杯にいろんな本が並べられていた。おじいさんがパンを買ってその家に入っていった。「はいってもいいの?」中に入ると家の中は「ぐちゃぐちゃ!」おじいさんは少女の本を見て「こんなになるまで、よく読んだねえ。ようし、なんとかしてあげよう」おじいさんは作業にかかった。本を一度ばらばらにしょう、、、

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*「RELIEURルリュール」=手工業的な製本技術のこと。特別な一冊のために製本・装幀を手作業で行う。ヨーロッパで印刷技術が容易になってから発展したアルチザン(職人)の仕事。日本文化にはない。ここでおじいさんが行ったのはルリュールである。60工程の製本の技術があるといわれている。皮表紙・金箔の文字とアラベスク装飾――ルリュ―ルには「書物」という文化を未来に向けて発信しょうというアルチザン(職人)の衿持が読み取れる。

アカシアDSC_9253

仕事がひと段落したのでパンを持って公園に行った。大きなアカシアの前でおじいさんと話す。
「このアカシアは400才以上だろう。ルリュールもそのくらい前からつづいてきた仕事なんだよ。」「父もルリュールだった。いつも言っていた。<ぼうず、あの木のように大きくなれ><本には大事な知識や物語や人生や歴史がいっぱいつまっている。それらをわすれないように、未来にむかって伝えていくのがルリュールの仕事なんだ。><名をのこさなくてもいい。ぼうず、いい手をもて>」

「こんなおおきなアカシア見たのははじめて。わたしおおきくなったら、世界中の木を見てあるきたいな」少女は思う。

翌日おじいさんの家に飛んで行くと、「ARBRES de SOPHIEソフィーの木たち」アカシアの絵は表紙に生まれかわり、金の文字でわたしの名前がきざまれていた。おじいさんのつくってくれた本は、二度とこわれることはなかった。家のドアーに、次のような文章が書かれてあった。
<私はルリュール。いかなる商業的な本も売らない、買わない>

ソフィーの木たち

そして私は、植物学の研究者になった。


伊勢英子さんは、たくさんの絵本を出版し、かつ多くの賞を受賞した絵本作家です。伊勢さんは絵や・絵本のテーマや題材を求めて、世界を旅したことでしょう。二冊ともパリが舞台ですが、街並みや小路や広場、行き交う人々、カフェで寛ぐ人々の風景がいいですね。
「大きな木のような人」では大きな植物園の木々や枝ぶり、みどりの葉がみずみずしいですね。少女は教授から400歳のアカシアの大木や3300万年前の木の化石を教わります。ひまわりの種をもらい、蒔き、発芽、育てます。植物園は春から夏にかけて花々が爛漫と咲きます。夏の終わりに少女は国に帰って行きますが、少女の心の中には小さな芽が育っています。やがて一本の木となるでしょう。教授は「きみは上手にひまわりを育てただろう。ひまわりは、きみの心の中にしっかりと根をおろしたんだよ。木々は、春は芽吹き、夏には濃い葉陰を落とし、秋には落葉、そして冬には雪が覆いつくし、、、100年200年と育ててゆくんだよ」

「ルリュ―ルおじさん」
本の大切さを忘れている現代人への警鐘ではないか!ルリュールおじいさんのお父さんが言うように、「本には大事な知識や物語・歴史が詰まっている。」つまり、本とは文化文明を未来に橋渡しする重要な役割があるといっているのだ。若い頃の本の虫時代と違って、最近の自分が本を軽視しているのではないかと反省した。


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  1. 2016/06/15(水) 20:37:25|
  2. 美術/ 音楽/舞台/読書
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