私の見た映画・美術・

映画・美術・イタリア旅行の紀行文の紹介です。

『2016年映画』「海よりもまだ深く」(監督、是枝弘和。出演、阿部寛、樹木希林) 6/3

『2016年映画』「海よりもまだ深く」(監督、是枝裕和。音楽、ハナレグミ。出演、阿部寛、樹木希林 
              6/3            真木よう子、池松壮亮、小林聡美、リリー・フランキー

DSC_9161.jpg


久しぶりの映画だ。3月の「キャロル」以来である。少しわくわくしている。
「海街」「そして父になる」の是枝作品。人気の男優、息子(阿部寛)と母親(樹木希林)との絶妙なやり取りが見ものだ。
昔は憧れの、郊外の団地。今や、、、そこが舞台だ。

作家として一度賞を取ったことがあったが、その後目が出ず、生活の為に興信所で働いている良多(阿部寛)。出版社からは漫画の原作をやらないかと言われているが、純文学者のプライドが許さない。興信所も取材だと言っている。そのくせ、ギャンブルには目が無く、いつも金欠状態で母親(樹木希林)や姉(小林聡美)に金をせびったり、母親の家で金目の物が無いかとあら探しをしたりする。そんな彼に愛想を尽かした元妻(真木よう子)は、一人息子の養育費が滞ると激しく要求してくる。息子の誕生祝いにミズノのスパイクを買ってやりたい、溜まった養育費やアパートの家賃をどうしょうか、、、と金の工面に追われる良多の毎日であった。

良多は「なりたい大人になれなかった」。同時に「なりたくない大人になってしまった」.。人からお金を借りまくり見栄っ張りだった父親のようにはなりたくないと思っていたのに、父親と同じ大人になってしまった。子どもの時の良多の将来の夢は公務員!(安定した生活)しかも、息子の慎吾も夢は公務員!(父親の良多のようにはなりたくない)

しかも、良多は執着しているものが多い。15年前の文学賞で得た「作家」の肩書。自分の不甲斐なさのために壊れた家庭の回復―妻と息子との幸福な生活―を今でも夢見ている。息子が可愛いし、元妻に未練がある。こんなはずじゃなかったと思っている。母親の樹木希林とダメ息子阿部寛とのやりとりが面白い。「何故男は今を大切にしないんだろう」「海より深く人を好きになったことがないから生きていける」母親の警句は寸鉄のように状況を突き刺す。

「男は振られた女の未来に嫉妬する」(良多は元妻をストーカーの如く尾行している)息子を使って復縁を迫る。元妻から「父親ごっこは止めて!」と罵られ、何で別れる前に父親らしいことが出来なかったの?と問われる。「愛って失ってから気付くものなのよ」と母親が言う。
DSC_9163.jpg

良多が子どもの頃、拾ってきた種から生えたミカンの木がベランダにあって、「花も実もつかない木だけど、あなただと思って水やってるのよ」と母親は良多に言う。(母親はよくこんなことを言う)あるいは、大器晩成だという良多への励ましか。
DSC_9162.jpg

「女は油絵。好きな人が出来たら、上から重ねて下はどんどん薄くなって行く。でもデータの上書きじゃない。ちゃんとここに残っている」良多が元妻の心変わりを嘆いた時、興信所の同僚の若い女性の台詞。

大型の台風が接近している日に、たまたま母親の団地に集まった良多と元妻と息子は帰れなくなって一夜泊まることになる。その夜、、、

DSC_9160.jpg

公園の中のタコのような滑り台の下で話す良多と慎吾。(良多の思い出の中の親子の対話)あとで心配して来た元妻の三人が一夜を過ごす。二人は初めは口論になりながらも、自分たちの人生に後悔があることを認めていくようになった。良多は元妻の新しい生き方の邪魔をしないと決心する。元妻も今の男と必ずしも、うまくいっていないのだ。

台風一過、帰って行く三人、ベランダから見送る母親。

「なりたい者になれなかった」ある意味で、大人たちは皆そうなのだ。いや、私は違う、という人が現れたらお付き合いをご免蒙る。「なりたいものに」人間は皆なれないのだ。だから、人生は多面的な展開をするのだ。ハナレグミの『深呼吸』は劇中の池松壮亮の賢そうな青年と、是枝監督の映画の空気感に通底し、ほっこりした感動を感じた。
②DSC_9172

劇中歌『深呼吸』(ハナレグミ)永積タカシ作詩作曲)ギターによる弾き語りが劇場一杯に流れてゆく。映画に流れている空気感を思わせるハナレグミの歌。

ハナレグミDSC_9170


夢見た 未来って どんなだったかな / さよなら きのうの ぼくよ
見上げた空に 飛行機雲      /  ぼくはどこへ 帰ろうかな
無くしたものなぞ ないのかな  /  さよなら きのうのぼくよ
ひとみを閉じて 呼んでみる  /   いつかのきみに あえる
おーい おい 覚えているよ  /  おーい おい 忘れないよ
誰かが 僕を呼んだような   /  振りむくけれど きみはいない
おーい おい 覚えているよ  /  おーい おい 忘れないよ
おーい おい 僕が 僕を   /   信じれない時も  
君だけは 僕のこと     /    信じてくれていた
夢見る未来って どんな だっけな / ハローアゲン 明日の僕よ
手放すことは       /  出来ないから 
あと 一歩だけ前に / あと 一歩だけ前に / もう 一歩だけ前に
 


スポンサーサイト
  1. 2016/06/03(金) 17:51:59|
  2. 『2016年映画』
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<[庄司紗矢香・無伴奏リサイタル」6/7 紀尾井ホール 6/10 | ホーム | 『2016年ボスの旅』⑭ 4月13日「旅の終わり― アムステルダムの一日」 5/28>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://sinema652.blog.fc2.com/tb.php/385-8b9f3821
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)