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私の見た映画・美術・

映画・美術・イタリア旅行の紀行文の紹介です。

『2018年映画』「万引き家族」(カンヌ・パルムドール大賞、是枝裕和監督)6/28

『2018年映画』「万引き家族」(カンヌ映画祭・パルムドール大賞・是枝裕和監督作品) 6/28
            出演、リリー・フランキ―、安藤サクラ、樹木希林、松岡茉優
              城桧吏、池松壮亮、佐々木みゆ 音楽、細野晴臣

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カンヌでパルムドール大賞を獲って話題になっている映画「万引き家族」。東京の下町に暮らす6人の家族の物語だが、題名にあるように普通の家族ではない。祖母・両親・子どもの三世代だが、偽装の家族だ。血縁で繋がってはいない。祖母の年金を当てにし、一家は万引きで暮らしている。是枝監督は偽装家族の物語で何を問うているのか?本当の家族のつながりとは何かを問うている。お婆ちゃんの役、お父さん、お母さん、子ども、お婆さんの孫、各自が役割を演じることで、家族のつながりや絆とは何かを表現しようとする。

 高層マンションが立ち並ぶ谷間にある、今にも壊れそうな平屋に、日雇いの父治(おさむ)(リリー)・クリーニング工場で働く母信代(安藤サクラ)・息子の祥太(城桧吏)・風俗店で働く孫の亜紀(松岡茉優)・家主である祖母初枝(樹木希林)が暮らしている。祖母の年金+生活保護受給が一家の経済の支えになっている。単身住まいということになっているので、民生委員から他の住人を慌てて隠すシーンがある。あとは万引きで暮らしていた。社会の底辺の一家だが、口は悪いが笑いの絶えない暮らしを送っていた。
 
 スーパーで治と祥太の万引きシーン。
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 冬のある寒い日、団地の廊下で幼い女の子が寒さに震えていた。家の中から男女の罵り合う声がした。見るに見かねた治が、家に連れて帰る。治を演じるリリーの怪演か、一見頼りなさそうだが見て見ぬ振りが出来ず、寒さに凍え死んでしまうと幼子を連れて帰ってしまう。体中傷だらけの少女(ゆり)を信代は虐待を思いばかり、6人目の家族にした。

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物語の中盤、日雇いの治は大怪我をして仕事を失い、信代はクリーニング工場をリストラされてしまう。失職した治と信代が、家族が誰もいない日に、唐突にセックスするシーンがある。その時の治が「できたな」と自慢げに言う。治は童貞だった。それまでの二人は精神的なつながりだけしかなかった。セックスを忌避してきた信代はどのような過去を背負ってきたのか?元夫のDVを受けた過去の事件。
 
テレビで誘拐事件が報じられ、幼子ゆりのことだった。ゆりを家に帰そうとしたが、ゆりはここがいいという。一家は慌ててゆりの髪を切ったり、洋服を代えたりして偽装を続けようとする。治、信代、祥太、ゆりの絆は一層深まってゆく。

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だが、駄菓子屋で祥太とゆりが万引きした時、店の主人に見抜かれて「妹に万引きさせるな」と忠告を受ける。その頃から、祥太は治の窃盗行為に疑問を感じだした。小学校に行けない祥太が密かに心の支えにしているのが「スイミー=小さいかしこいさかなのはなし」だ。まぐろに兄弟が全部食べられて1人だけ生き残ったスイミー。知恵を使ってまぐろに食べられないようにしたスイミーの冒険譚は、祥太の心の成長譚でもある。ダメ親父であればあるほど、祥太の中で治という父親像が壊れてゆく。ダメ親父は祥太の成長を促す。
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祖母の初枝は別れた夫(故人)の息子の家に度々お線香をあげに行き、選別を貰っていた。そこの長女がオーストラリアに留学ということになっていて、彼女の写真が飾ってある。実は万引き家族の亜紀が長女であった。息子の家ではそのことを知らない。亜紀も心の闇を抱えていたのか?亜紀は血縁ではないが、祖母の初枝に猫のように甘える。初枝も本当の孫のように愛撫する。
DSC_2032.海水浴にゆく

一家は海に海水浴に行く。5人が波遊びに興ずるのを砂浜で見ている老婆の初枝。入れ歯を外して微笑んでいるが死相がでている。あえて老醜を演じた樹木希林の絶品だ!初枝は安藤サクラの信代に「よく見ると綺麗だね」と言う。樹木希林のこの映画に対するメッセージかな?安藤サクラという女優が「家族」に出合うために信代役をやっている。汚くて悪い女から、2人の子どもの母親になってゆく感じだ。(サクラは実生活でもママになった。)
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隅田川の花火大会が音だけが聞こえる。一家団欒の場で初枝は亡くなった。老衰だ。慌てる治と信代。葬儀のお金がない。どうやって火葬するのかわからない。治が家の地下に初枝を埋める。
祥太はゆりに万引きをさせたくないので、彼だけで万引きをしょうとすると、ゆりは言うことを聞かず一緒に万引きをしょうとする。祥太はわざと派手に商品を持ち出して逃走。店員に追いかけられて、橋から身投げして骨折して捕まる。警察に補導されて、一家は瓦解する。

偽装家族に家族の絆はあったか?治と信代の絆は?治と祥太は?信代とゆりとは?祥太とゆりは?祖母の初枝は、皆からは金目当てだけの存在だったか?初枝のほうでは皆をどう思っていたか?答えは明白だ。現実の幼児虐待・子殺し・実の親による子見捨て・誘拐・など痛ましい事件が起こっているが、作中人物の境遇と比べてみると、、、
親の虐待で傷が絶えないゆりは、あの家族によって人間らしい親子関係になれた。親から捨てられた祥太はダメ親父だけど治と父子の関係が結ばれて、そしてそこから巣立ってゆく。

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事件の発覚で一家は瓦解したけれど、「万引き時代」は夢の空間だった。懐かしい心の拠り所のようなものを感じた。

音楽は監督の熱烈なラブコールで答えた世界的なミュージシャン細野晴臣。登場人物の感情のざわめきや、行動のアクションの波のように表現や、昏々(こんこん)と湧いてくる泉のように音楽の流れで表した。細野晴臣の音による不思議な芸術だ。



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  1. 2018/06/28(木) 10:12:19|
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『日記』「沖縄・慰霊の日ー少女の平和の詩の朗読」 6/25

『日記』『沖縄・慰霊の日―少女の<平和の詩>の朗読』  6/25
                           中3相良さん「生きる」を語る。

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 「沖縄全戦没者追悼式」(6/23)の女子中学生の詩の朗読に感動した。中3の相良さんが平和の詩「生きる」に、平和への思いと決意を込めて高らかに述べた。

私は今、生きている。

私の生きるこの島は、
何と美しい島だろう。
青く輝く海、
岩に打ち寄せしぶきを上げて光る波、
山羊の嘶き、
小川のせせらぎ、
畑に続く小道、
萌え出づる山の緑、
優しい三線の響き、
照りつける太陽の光。

私はなんと美しい島に、
生まれ育ったのだろう。

 6月23日が来ても、私の心は萎びていて、心が対応していなかった。彼女のメッセージをユーチュブで生の映像で見て心が震えた。しかも、彼女は紙に書いたものを読み上げたのではないのだ。原稿を見ずに語ったのだ。詩「生きる」は決して短くはない。行数でいえば120行余の詩なのだ。それを堂々と原稿を見ずに語ったのだ。爽快感にひたった。


 「私は、今、美しい島に生きている。この島も73年前は地獄の様相を呈していた。現在の平和もその犠牲の上にある。この平和を大切にしたい。」

(平和の詩・全文)
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彼女は参列者に向かって堂々と語ったのだ。参列者の一人安倍首相が、秘書が作った薄ぺらな心の無い原稿を、心のない調子で読むのと対極的である。

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 翁長知事の病魔と闘っている姿が痛々しかった。



  1. 2018/06/25(月) 22:20:38|
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『日記』「イタリアへの想い」 6/21

『日記』「イタリアへの想い」6/21

グランド・カナル

 連れ合いの話に、ある院生が中一の時に叔父を訪ねてヴェネツィアに旅行した。一家(祖母・母・姉と本人)だけで、英語も不自由なのに無事に行った。自信みたいなものがついたという。ヴェネツィアに一週間滞在して、忘れられない思い出を体験したという。イタリア好きの連れ合いと話が弾んだそうだ。

 二十年前からルネサンス美術の魅力にとりつかれて毎年のようにイタリアへ行った。ヴェネツィアのグランドカナルの風景が好きだった。あの年代物の商館が大運河に沿って並び、ゴンドラが行き交い、賑やかなあの風景がたまらなく好きだった。孫にその話をすると、「僕も行きたい」というのだが、親が学校を休んで行くなんて!と反対するだろうし、こちらの健康状態が許さない。

 時々、旅行したところを想い出してぼんやりしている。外国人大学のあるペルージャやカンポ広場や美術の宝庫であるシエナを最近しきりに思い出す。世界一美しいカンポ広場で寝転ぶことが夢だった。懐かしいルネサンスの記憶漂う広場で見る夢はどんな夢だったか、、、

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 シエナといえば、ヴァイオリニスト庄司紗矢香を思い出す。彼女は画家である母の留学に伴い三歳からシエナで二年間を送る。ピアノを習っていたがキジア―ナ音楽院でヴァイオリンの演奏を見たことから、五歳からヴァイオリンを始めた。帰国後、六年生の時、全日本学生コンクールで一位。一九九五年から念願のキジア―ナ音楽院でヴァイオリンをウート・ウーギに学び、十四歳の時、ヴィエニヤフスキ国際コンクールで優勝。1999年パガニーニ国際ヴァイオリンコンクールで優勝、その後の活躍は言うまでもない。彼女は専門以外にも絵画や文学にも精通している。ド・スタールやドストエフスキーと聞くと嬉しくなってしまう。

シエナのキジア―ナ音楽院は、夏季の「キジア―ナ音楽祭」で知られている。各専攻のマスタークラスには、世界各地から名のある音楽家たちが駆けつけ教鞭をとるため、入学オーディションは激戦となっている。ポリーニ・アッカルド・ズービン・メータ・バレンボイム・リッカルド・シャイー・アバド・シノーポリなどが若き日に夏季講習で学んだ。

DSC_2400シエナ.大聖堂

 中一の時、ヴェネツィアに滞在した人、シエナに幼児の時滞在、キジア―ナでヴァイオリンに魅せられて世界的ヴァイオリニストとなった人。少女の時に稀な体験をしてそのチャンスを生かした人、また、生かそうとしている人に声援を送る。



  1. 2018/06/21(木) 11:05:15|
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『2018年映画』「共犯者たちー韓国ドキュメンタリー映画、監チェ・スンホ  6/11

『2018年映画』「共犯者たち」(韓国ドキュメンタリー映画、監督チェ・スンホ  6/11
              17年8月韓国公開、18年6月、立大メディア総研、上映
            シンポ(金京来、望月衣朔子、砂川浩慶、岡本有佳、金富子)     

 (映画「共犯者たち」のポスター)
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映画「共犯者たち」は2008年に始まった韓国保守政権(李明博~朴クネ)の―公共放送KBSと公営放送MBCへの言論弾圧と、それに抵抗した記者たちの姿を描いたドキュメントである。日本でもアベ政権からのメディア介入が行われた。韓国での政権による言論弾圧と抵抗するジャナーリストたちの行動は我々にとっても大きな示唆を与えるに違いない。
映画「共犯者たち」はこの9年間、公共放送を台なしにした「主犯」と放送業界の「共犯者たち」の実態を明らかにするために、崔監督のカメラは鋭く犯人を追って探し出してゆく。一方、言論弾圧に抵抗したプロデューサーや記者たちはどのように反撃したか、そして敗北した後、どのように転落していったのかを追跡する。映画は、「占領」「反撃」「キレギーマスゴミ、ゴミ記者の合成語」の三章からなる。
映画監督チェスンホ
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韓国では、2008年米国産牛肉の輸入問題の報道により李明博政権が大打撃を受けたことから、本格的な言論統制が始まった。マスメディアが大げさに世論を誘導したと捉えた政府は、公共放送KBS(韓国放送)の社長解任のために、警察の導入で決行しようとした。記者やPD(プロデューサー)の反対にあい、大騒ぎになった。(2008年KBS8.8事態)政権がマスコミ介入の第一歩となったのが、この8.8事態であった。
(警官導入・李明博政権の介入)
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次に2010年、「四大河川水深6メートルの秘密」の実態告発した公営放送MBC(文化放送)もトップが入れ替えられ、李明博の腹心金在哲(キム・ジェチョル)を社長に送り込んだ。MBC側ではマスコミ史上最長の170日のストを打ったが200名の馘首という犠牲者が出た。
この間、テレビでは人気バラエティーやドラマのPDやアナウンサーが抵抗を続けていたがボロボロに敗れていった。不当解雇され、担当番組を追われ、閑職に追いやられた。
(真相究明)
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結局、2大放送局が政治権力の「広報機関」に転落していった。2014年のセウォル号沈没事件では「全員救助」?という誤報をし、2016年の「崔順実ゲート事件」(朴槿恵大統領の友人の政治スキャンダル)の真実を隠蔽しょうとした。
(真相究明)
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映画はチェ・スンホ監督らがMBCやKBSの社長や役員らに直撃し、彼らが指示している偏向報道や不当な人事について、執拗に問い詰めてゆく様子が収められている。
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韓国保守政権の言論弾圧は凄まじかった。だが、それに対抗する民衆のエネルギーは驚異的だ。百万のデモのエネルギー!それに対して日本人は冷えている。日本人は穏和な民族なのか?何とか食えるから怒らないのか?いずれにしろ、韓国の若さに対して日本は老齢?なのか。どうしたらいいか?

(韓国の百万デモ)
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映画「共犯者たち」は近日中に公開予定だそうです。





  1. 2018/06/11(月) 21:30:55|
  2. 『2018年映画』
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『日記』「検察・特捜部まで忖度するのか!」 6/4

『日記』「検察・特捜部まで忖度するのか!」6/4

5/31.大阪地検特捜部が佐川前国税庁長官らを不起訴にした。何じゃ!私の中で何かが崩れてゆく。此のところ苛立ちの毎日だが、何故か今日はへこたれの暗い風が吹いている。8億円の値引きは嘘なのか?公文書改ざんは幻影だったのか!
 最悪最低の国になってゆく。福田元総理が「不起訴でお咎めなしとなったら、自ら命を絶った人はどうなるのか」、元特捜の若狭氏が「オカシイ!」と指摘した。元大蔵官僚のA氏が「不気味だ、怖い」と呟く。この国のネジが狂って「アベゲート」情況があちらこちらで起っている。鬼の特捜と言われたのは昔のことか。いや、大阪地検は元女性官僚を冤罪で獄に送っている。三権分立はここまで崩壊したのか!

 立法・行政・司法の三権が独立して近代民主主義は成り立たっている。それが空洞化してこの国はどこへ流れてゆくのか。墓場に片足をおく年になって、こんなものを見るなんて、、、 


  1. 2018/06/04(月) 20:51:28|
  2. 『日記』
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