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私の見た映画・美術・

映画・美術・イタリア旅行の紀行文の紹介です。

『2014年映画』 「幸せのありか」(監督マチェイ・ピェブシツア。主演ダヴィド・オブロドニク)ポーランド映画。岩波ホール12/25

『2014年映画』「幸せのありか」(監督マチェイ・ピェブシツア主演ダヴィド・オブロドニク) 
                   ポーランド映画、岩波ホール、12/25

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幼いマテウシュは身体的に重度の障害を持ち、その上に医師から知的障害児で植物状態・不治の病と宣告された。
映画はマテウシュの成長を記録映画のように撮っていく。
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成長するにつれ、指はいびつに曲り、背骨は湾曲し、首は座らないので、独りで立つたり歩いたりも出来ない。言葉を話せず、彼に出来ることは刺激に対する反応と本能の要求であるが、見ることは出来るし聞くこともできる。いや、成長するにつれて心の中で様々な思いを巡らせていたのだ。しかし、思いを伝える方法を知らない。そのもどかしさに必死にもがき苦しむ様子は痛々しく、見ている者を緊迫感で包む。
彼は2階の窓から家々の風景―それぞれの家庭の様子や男女の関係を見た。妻に暴力を振う男や抱き合う男女だった。家から外に出られない彼にとって唯一の社会の窓だった。その中の優しい少女に淡い気持ちを抱いたりする。
初恋

彼を一番可愛がった父は夜空の星を見ることの楽しさや、自分の意思を示すために拳骨(げんこつ)で床を叩くことや車椅子を作ってくれたが突然の病で死んでしまう。深い愛情を振り注いでくれた母は彼の介護で疲れ腰を痛め入院してしまった。姉の結婚を機に彼は知的障碍者向けの施設に入れられてしまう。
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施設の入所者の中で彼だけが知的な好奇心をもっているし性的好奇心もある。介護者の乳房に点数を付けたり興奮したりする。極めて若者らしい行動だがヒステリーとされ「発作」扱いされる。若く美貌のボランティアと束の間のデート、その恋も無残に終わり青春の苦さを味あう。しかし、施設では「植物状態」の死体のように扱う。理解されない苦悩にもがき苦しむマテウシュ。
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ベテランの介護士から「瞬きで意志を表すこと」を教わり、やっと自分の意思を表現することを覚えた。人間の世界にやっと仲間入りしたことなのだ!「植物状態」と言われた患者が「自分は知性と感情を持ったひとりの人間であることを」証明したのだ。人間賛歌の胸に迫るシーンであり、透明な音楽もいい。

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知的障害、身体の重度の障害があり、「植物状態」と医者から誤診された主人公が、不屈の意志と努力で「知性と感情」を持つ人間であることを証明した映画。
しかし、健常者である私は理解が浅薄のように思う。障害者の本当の苦しみが解らない。映画がひしひしとわが身を打ってきたのは後半、後半の表現方法を身につけ、自分の意志を表し始めてからだ。この映画のテーマ、もの凄い忍耐力と労苦で掴んだ「人間になること」の意味を噛みしめている。

エンディングで「エヴァ・ピエンターを偲んで」とあった。若くして亡くなったエヴァは監督マチェイ・ピェブシツアの学生時代からの友人で、この映画は実話に基づいて製作された。

監督・脚本、マチェイ・ピェブシツア
 1964年ポーランド生まれ。ジャナーリストとして活躍しながら、テレビ・映画の脚本家になる。「木っ端みじん」(2008年)で デビュー、映画祭の賞に輝く。

主演、ダヴィド・オグロドニク
 1985年ポーランド生まれ。2012年クラコフの演劇大学を卒業。パヴェウ・パヴリコスキ監督の「イーダ」に出演している。  主人公マテウシュを演じるために、何か月も準備し、集中訓練を受け、実際に障害者にも会い、パントマイムの指導も受 けた。熱演である。
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* 本年はいろいろとありました。記事があちらこちらに飛びましたがお付き合い下さって
有難う ございました。感謝申し上げます。
  来年、お会いしたいと思います。有難うございました。



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  1. 2014/12/25(木) 15:42:55|
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『日記』 「9条改憲の道・スタートか?」(2014年総選挙が終わって)    12/16

『日記』 「憲法改悪の道・スタートか?」(2014年総選挙が
                          終わって) 12/16

総選挙が終わりました。
* 戦後最低の投票率更新
今回52.65 12年59.31 09年69.27
突然の大義なき解散、自公300の大勝予測、争点が盛り上がらない選挙等で投票率が最低更新した。

* 選挙の結果
自民290(295)微減、 民主73(62)少増、 維新41(42)変わらず、公明35(31)微増、共産21(8)躍進、次世代2(19)激減、生活2(5)*他党に移った者が数人いる、社民2(2)変わらず、
自公は現状維持の325、安倍政権は信任を得たとして、予定のコース=憲法改正の道をたどるものと思う。 
衆議院475/、過半数238、絶対安定多数266、3分2(憲法改正発議)317。

* 一方にこういう見方がある。自公325、3/2以上だが首相の描く憲法9条改正には公明と一致せず、自民単独の320を狙っていたが不発に終わった。(改憲論は予想以上に多く、自民、公明、維新、民主の一部に拡大している。9条・安全保障の面でそれぞれ異なり、自民と公明も一致が難しいとされる)
安倍の目指す改憲は9条改憲であり、衆参での自民単独3分の2を目指す。さしあたって、2016年7月の参議院選での自民単独3分の2以上だ。ここが天王山!(参院現状、定員242、自民114、公明20、自公134、 過半数121。3分の2=160)
(安全保障・9条改憲となると、次世代・維新・民主の一部に安倍の考えに近い者が多い。そこと結びつく可能性もある。)

* 選挙での感想
① 何故自民が強いか?自民大勝のマスコミの予測記事が出た時考え込まざるを得なかった。結果もそうなった。その理由として
「民主政権の反動/ 景気がよくなった/ デフレからの脱却/ アベノミックスのマジック」
「自民に代わる政党がいない/ 野党が分散して小選挙区制では不利だ」
真実や実態は違うかも知れないが、よく言われたことだ。

②  日本の市民社会に構造的変化がおきているのではないか?大都会と地方・農村。大企業と中小・零細企業。正規と非正規。格差構造が拡大して、大企業の正規と非正規との賃金格差が広がっている。年収200万とその倍、3倍・4倍との格差拡大!大企業の正規の社員の組合としての「連合」と、組合と無縁の非正規の労働者。問題はそれぞれの生活と意識がどうなっているかだ。「景気が良くなるぞ!」という与党の合唱の歌い手に都市の正規労働者がなっていやしないか?浮動票の一部が自民に流れたという。今まであまり言われなかったことだ。大都会に保守の基盤が出来つつあるのか?

* 16日、政府と経済界、労働団体の代表らによる「政労使会議」を開き、15年春闘に向け「政府の環境整備の取り組み  の下、経済界は賃金の引き上げに向けた最大限の努力を図る」との合意文書をまとめた。ああ!「官製春闘」!おかし  な話ですね?

③ テレビで言っていたが安倍の「アベノミックス」の選挙プログラムに野党もはまった。政権交代の時は民主党の「マニフェスト」だった。どちらかが争点になる「話題のプログラム」を用意出来たかで勝負が決まるという。野党は与党の「アベノミックス」土俵の上で踊らされマジックを打ち破れなかった。解釈改憲の閣議決定や秘密保護法や原発推進やTPP等、凝縮された問題の2年間だったのに、野党はそれらを土俵に戦えなかった。

④  次の天王山=2016年7月の参院選に向けて戦いが始まっている。当面民主党の代表選出だ。民主の強化策か野党再編か、どういう考えの誰を選ぶかによって今後の方向性が決まる。一回政権を取った民主なのだから、何故今日に至ったかを総括していい知恵を出して欲しいのだが。
(「統一戦線」と「野党再編」は違うかも知れない。一強の自公と9条改憲を賭けての戦に、小選挙区制での戦いで勝つにはバラバラではだめだ、「統一戦線」でしかないと思った。反ファシズム統一戦線みたいなものを考えた。「野党再編」となると党派の目標・政策の中身が問われる。

⑤ 長くなったのでこの辺で終わりにしたいが、他の人の情報ですが重要なので載せます。読んで下さい。
「安倍が何故、今2014年12月に選挙をしたのか?」
選挙前の日程では、衆院の任期は2016年12月まで、10%の再引き上げは2015年10月だった。4月の8%の引き上げの影響がいまだに続いている。予定通りの2015年10月に再引き上げをやると、景気後退が2016年7月の天王山(参院選)にぶつかる。参院選にどうしても勝ちたい。安倍の目的は「改憲を成し遂げ、戦後民主主義に替わる「新体制」のリーダーとして名を残すこと。」
その天王山の2016年7月の参院選に勝つために仕組んだトリック。その時に景気を良くしたい!9条改憲のために自民単独で衆参3分の2が欲しい。衆参同日選挙で3分の2を取りたい!
10%再引き上げを、2016年7月以降にもっていきたい。今回の延期で10%再非上げは2017年4月になった。衆院の任期は2018年12月までになった。次回の衆院は何時解散・選挙をするか?2017年4月の10%再非上げ以降景気はどうなる?
2016年7月の衆参同日選挙が浮かび上がって来る?

2016年7月の頃
① 2020年のオリンピック特需がそろそろ始まる。
② 2016年7月は10%再引き上げの9か月前で、設備投資・住宅の駆け込み需要があるだろう。8%の時がそうだった。
官邸・内閣ブレーンに知恵者がいる。以上の筋書もありえるものと考えておく必要がある。
         
今後2016年7月に向かって安倍は景気対策をあの手この手で打ってくるだろう。「自由と平和の野党」が大胆な景気対策を打って対決できるか? 増税が選挙の主軸となるから、景気・生活が選挙の争点となる。そして憲法9条という大切な国の指針を賭けての闘いになる。

これはあるツゥィターに投稿されたAさん論文です。衝撃的に目から鱗でしたのであえて載せて頂きました。有難うございました。



  1. 2014/12/16(火) 20:50:06|
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『2014年映画』 「紙の月」 (原作・角田光代、監督・吉田大八、主演・宮沢りえ) 12/10

『2014年映画』「紙の月」(原作、角田光代。監督、吉田大八。出演、宮沢りえ。池松壮亮。
小林聡美。大島優子。田辺誠一。 12/10

女性の犯罪を女性作家が取り上げることが多いのは、女特有の心理を女性だから掘り下げられると一般的に思われているからか?「8日目の蝉」で子供を盗み、その逃亡劇を書いた角田光代が、今度は女性銀行員の使い込み事件を取り上げた。

紙の月 タイトル①

「紙の月」の主人公梨花(宮沢りえ)は、短大を出て、結婚し、郊外の一戸建てに住んでいる。夫(田辺誠一)は海外に展開する企業のエリートサラリーマン、子供がいないので銀行に契約社員として働いている。仕事は順調で上からも評価されているのだから何も不満はないはずだ。安定した人生を送っていたはずの彼女が何故金を使い込んだのか?1億円もの大金の横領にまで至ったのか?

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夫の仕事が忙しくて構ってくれない・子供がいない・生活に張り合いがない・たまたま若い学生(池松壮亮)に誘われたなどの理由が考えられるが,全てそうだと言えばその通りだが何故か腑に落ちないのだ。主人子を演ずる宮沢りえが宇宙人的で掴みどころがないのだ。何年か前に見た「父と暮らせば」のリアリズムと違った妖精のようなニューアンスは何だろう?
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梨花は顧客の家で見かけた大学生に誘われるままにホテルに行き、買い物の支払いのために顧客の預かり金に手を付けたことを切っ掛けに、預金を使い込んでいく。金は大学生との密会に使い、夫が上海に単身赴任すると益々のめり込んでいく。
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彼女は店頭で気に入ったブランドの鞄などあれば「あっ!」という間もなく買ってしまう。日常から一線を越えるシーンは宇宙人になったみたいだ。それまでの家庭生活、銀行、顧客の家庭訪問の日常の毎日のシーンから一線を越えるかのような飛躍なのだ。初めびくびく坂道を転げ落ちていった梨花は、大胆になり、高級ホテルでの密会では一流モデルみたいに美しく、かつ束の間の自由と開放感を味わう。
職場には、不正への誘惑を口にだけする悪魔的な同僚(アイドルAKB48の大島優子)と、良識と打算の典型みたいな融通の利かない同僚(小林聡美)が、誘惑と牽制の役割を果たして映画の厚みをだしている。
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映画の冒頭のシーン、主人公梨花がカトリックの女学生の時、貧しいアジアの子どもを救うために寄付をした。修道女の演説に感動して寄付に熱中する彼女。同級生の熱が冷めても執拗に諦めない梨花、父親の財布から大金を盗んで寄付をする梨花。横領して大学生に貢いでいる彼女に、女学生時代の寄付する梨花が重なる。彼女の心の深層に蠢(うごめ)きトラウマになっているのは、「貧しい子どもを救うための寄付」ではないのか?
そのために父親の財布に手を付ける=銀行の金を横領する、とは同質のトラウマから発しているのではないか? ではそのトラウマの真相とは何か? 「貧しい子に恵みを与える」という宗教的憐れみではないのか?女学生の時の講堂というか教会というか、「神の御心」という異様な雰囲気での修道女(校長)のお説教が全ての根源ではないかと思えてくる。

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 ラストでアジアの屋台、貰ったリンゴをかじるシーン、店主の顔の大きな痣は、女学生時代に寄付のお礼に送られてきた少年の写真、顔の大きな痣に似ていた、、、異国の雑踏に消えて行くラストシーンが鮮やかに印象に残った。

  1. 2014/12/10(水) 15:44:05|
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『日記』 「皆さんに訴えます。12月7日」

『日記』「皆さんに訴えます。12月7日」

来週12月14日(日)は衆議院議員の総選挙です。「消費増税の引き上げ延長を問う」選挙だと言っていますが、もともと経済状況いかんによっては考慮すると法案にあったので、総選挙の大義にならないのです。「アベノミックス」の信を問う等と言っていますが、野党の選挙準備が整わない内に選挙し現状の議会勢力を維持して、憲法改正をやろうという腹がみえみえです。今、選挙をやれば勝てると国民を馬鹿にした態度です。

「秘密保護法」、「集団的自衛権行使容認の閣議決定」、「原発容認」。
他にいろいろとあるのですが、一番大事な問題の 3課題です。
どうしても上記の3件は容認できません。戦後60余年続いた「平和憲法」違反です。日本の大きな曲り角です。総選挙で「自公」圧勝させてはなりません。「憲法9条の日本」「法的に戦争しない国の日本」が滅びてしまいます。

前回の総選挙の票数から、「自公・その他追従する政党」に勝つには、反「自公」統一戦線が一番いい。沖縄以外に「統一戦線」は組まれていません。現状では残念ながら不可能のようです。
今やれることは何か?
① みんなさんが投票することです。(先日の「安倍圧勝」という新聞各紙の予想は、「どうせ決まったのなら投票に行かなくてもいい」という「投票率」を下げる効果を狙ったもの。「投票率」が下がれば組織戦の「自公」が有利です。)
② 「自公・その他追従政党」以外の野党ならばあなたの思想信条に従って、どの政党でもいいから必ず投票することです。「自公」の議員の数を出来るだけ減らすことです。安倍は曲者です。勝利の目安の数を意外に少ない数を言ったのですから。それより少しでも多ければ勝利となるのです。
③ 選挙が始まった11月末に官邸筋からテレビ各局に「公正へのお願い」という文書が届いた。選挙報道に関して内容に関する規制・干渉の内容である。麻生財務相が以前「ナチスの例に見習えばいい」と言ったが、これはナチの暴力的な手法に対して、現代の手法である。このことも大問題だが、言われたマスコミ各社が委縮して問題化しないことだ!
③ 「ろくでなし子」と「北原みのり」の両氏が警察に捕まった。北原みのりさんの安倍政権に対する批判は尖鋭的だ。彼女の文章は面白かった!もし、安倍批判が強烈でなかったら逮捕されなかったでしょう。選挙中の逮捕!これは明らかに政治弾圧です。古臭い「性弾圧」に借りた政治弾圧です。政権党はしっぽを出しているのです。権力の恐さでもあるのですが負けてはいられません。
④ 野党が勝つポイントは「まだ投票を決めていない」いわゆる浮動票です。それを掘り起こせるか?今回、与党も野党もそれをつかんでいないと思うのです。いや、与党は何も起きないほうがいいのでしょう。野党が「風」を起せなかったら負けなんですよ。パンチを食らっている国民の方が問題を投げ掛けられているのです。
みなさん! 頑張りましょう!

  1. 2014/12/07(日) 21:26:47|
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『美術/音楽/舞台/読書』 「ウィレム・デ・クーニング展」(ブリヂストン美術館~15年1/12)12/6

『美術/音楽/舞台/読書』「ウィレム・デ・ク~ニング展」(ブリジストン美術館~15年1/12)12/6

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ブログの来訪者である、美術家のYさんから「デ・クーニング展」(ブリヂストン美術館)を教わり見にいった。デ・クーニングとは戦後アメリカの抽象芸術の、ジャクソン・ポロックと並んだ代表的な画家で、Yさんたち抽象芸術に志した日本の画家たちにも多くの影響を与えたそうだ。抽象美術に疎い小生にとってクーニングはもとより戦後のアメリカ抽象芸術は殆ど知らなかった。(小生は頑固なリアリズム信奉者だったのか?)

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展覧会は女性像を描いた1960年代の作品群がメインの展示で、クーニングの有数のコレクターである「ジョンアン・アンド・キミコ・パワーズ」(夫人は日本人)のコレクションで成り立っていた。パンフレットに「具象と抽象の狭間の表現」とあるように、何が描かれているかは解る絵だったので少しほっとした。ボリューム感たっぷりの豊満な女性像を、しかも赤色を中心に自由に大胆に表現している。顔とか胴体とか足とかが解るかどうかの際どい、具象と抽象の狭間を狙った作品だ。水や青い眼、茶色の髪や風景の、それぞれの女を描くのに、緑、青、茶、水色を絵の中にうまく配置している。しかし絵が赤色を基調としているからと言って明るく楽天的とは限らない。クーニングは「女性像」を描くことが生涯のテーマだったそうだから、「おんな・女・オンナ」と並べられるとちょっと不気味である。この人何故女性に興味を一生持ち続けたか?

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* 「ウィレム・デ・クーニング」(1904~1997)オランダ系アメリカ20世紀の画家。
ジャクソン・ポロック(1912~1956)と並ぶ「アクション・ペイティング」の代表的な画家であり、抽象表現主義の創始者の一人として、20世紀美術史に重要な位置を占める。
1904年オランダに生まれ、商業美術の会社で働きながらアムステルダムの美術の夜学に通った。1926年渡米、商業美術の仕事で生計を立てた。27年アルメニアから来た画家アーシル・ゴーキーと知り合い影響を受けた。30年代、ニュー・ディール政策の一環、WPA(公共事業促進局)の公共建築の壁画制作に、ポロックやマーク・ロスコ等抽象画家と共に参加した。48年ニューヨークで個展を開き注目され世に出た。40年代から始まった「女」シリーズは彼の生涯のテーマとなった。

出品作品
第1室
<マリリン・モンローの習作>1951、パステル・鉛筆・3点の素描で構成。初期の作品。
<リーグ> 1964 油彩・板に貼られた新聞紙。今展覧会のポスターに使われた。
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<女> 1964 油彩・板。
<サック・ハーバー> 1965 油彩・板に貼られた・マスキングテープ
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<歌う女> 1965 油彩・カンヴァスに貼られた紙。
第2室
<水の中の女> 1965 油彩・板に貼られた紙。
<女> 1965 木炭・半透明紙。(ニューヨーク近代美術館)
<ふたりの女> 1965 油彩・板に貼られた紙。細長い板に貼られた油彩画。
<風景の中の女> 1966 油彩・カンヴァスに貼られた紙。(東京国立近代美術館)
<無題(女)> 1966-67 油彩・カンヴァスに貼られた紙。(東京都現代美術館)
<記号の女 Ⅲ> 1969 油彩・カンヴァスに貼られた紙。(池田20世紀美術館)
* 所属の無印は全部「リョービ・ファウンデーション」。(パワーズコレクションの寄贈したリョービ財団)27点

美術館側では、抽象芸術の一般化・普及のためか、抽象絵画に関係する作品を揃えた。(ブリヂストンの所属する)
第4室
* 「ポール・セザンヌ」 <サント・ヴィクトワール山とシャトー・ノワール>(1904~06)
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有名な話であるが、セザンヌの「線」=「自然を円筒・球・円錐によって扱う」というキュービスムの理論的基盤から抽象絵画は生まれた。

* 「パブロ・ピカソ」 <ブルゴー二ュのマール瓶、グラス、新聞紙>(1913)
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セザンヌからさらなる発展、現代抽象絵画の基礎を作ることになる。

* 他に抽象絵画の歴史に関係する画家として、マティス、モンドリアン、カンディンスキー、パウル・クレー、レジェ、フォートリエ、デュビュッフェ、菅井汲、等の作品。以下同じ。
第5室
* ハンス・ホフマン、ジャクソン・ポロック、等と。斎藤義重、白髪一雄ら5名。
第6室
* アンリ・ミショー、ヴォルス、ピエール・アレシンスキー
第7室
* ピエール・スーラ―ジュ(1919~)4点
第8室
* ザオ・ウーキー(1921~2013)6点
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* 堂本尚郎   (1928~2013)5点

ザオ・ウーキーの作品に驚喜した!凄い色彩だ!こういう色使いをする画家はちょっといないのではないか。ド・スタールはもっと色が淡い。今日の一番の収穫だ!ウーキーは中国宋朝の王族の血を引く名家の出だという。1948年、27歳の時因習的な画壇を嫌ってパリに渡った。詩人アンリ・ミショー、画家ジョルジョ・マチウらと交流。一方、パウル・クレーを知り、記号的な題材の扱いを勉強した。
57年渡米し、マーク・ロスコ等アメリカ抽象表現主義の画家たちと知り合う。80年代以降、色彩を空間に解き放つような画面に転換し、山水画や抽象表現主義を合わせ飲んだかのような雄渾な作品を制作いている。(1921~2013)

第8室は同じ2013年に帰天したウーキーと堂本尚郎(1928~2013)の追悼室になっている。「アンフォルメル」で一緒に括られるが、堂本は画風も似ているので親友か?堂本印象の甥、日本画も学び将来を嘱望されたが、1952年印象に同行してヨーロッパに目を開き、55年に渡仏して洋画に転じて「アンフォルメル」に身を投じた。

* ブリヂストン美術館は創設期に父に連れられて来たことを覚えている。国立の近代美術館が無かった時代、油絵の近代絵画を見てわくわくしたのを覚えている。ヨーロッパからの大きな展覧会は国立博物館でやった。あと、記憶にあるのがこの頃都内のデパートでよく近代美術の展覧会をやっていて見にいった。
戦前、日本のお金持ちで芸術に関心を持つ人がヨーロッパに行って美術を収集した。「松方コレクション」とか「福島コレクション」とか「大原コレクション」「石橋コレクション」とか呼ばれた。それぞれ、美術館を造って公開した。松方コレクションなど、フランスに留め置かれて多くが返還されていないままと聞く。

*「神奈川県立近代美術館」 (鎌倉1951~
 「石橋財団ブリヂストン美術館」 (京橋1952~
 「国立近代美術館」 (京橋ー北の丸 1952~
 「国立西洋美術館」 (上野 1959~松方コレクションの一部。


  1. 2014/12/06(土) 12:44:47|
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『美術/音楽/舞台/読書』 「キリコ展・覚書」(「デ・キリコー変遷と回帰」汐留ミュージアム~12/26・  12/1 

『美術/音楽/舞台/読書』「キリコ展覚書(「デ・キリコ」ー変遷と回帰)」汐留ミュージアム
                                         ~12/26  12/1

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「ジョルジョ・デ・キリコ展」を見た。
抽象絵画は不案内なので、感想・覚書を記す。
20世紀初頭のシュルレアリスムに影響を与えた画家として知られている。1910年代に登場した時「形而上絵画」と言われた。それは「日常の風景や物を描きながら、それらの背後に秘められた過去の記憶や思考を描き出そうとする」と解説にある。例えば初期の作品、 

*「謎めいた憂愁」(1919)

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形の歪んだ箱に貼りついたユダヤのビスケットと子供が遊ぶような積み木の棒/真ん中の大きな空間に、不釣り合いに置かれている大きなヘルメス像。
*(たまたまユダヤ人街の店で見たビスケット。)
(ヘルメス=ギリシャ神話の神、ゼウスの使い・旅人、商人の守護神)
<画面で描いた物>= 箱、ビスケット、棒、ヘルメス、  

互いにもともと関係のない・それぞれ独立した存在を一つの画面に描き合わせていく手法を「デペィズマン」というそうだ。キリコは巧みにこれを使って、現実の風景とか静物とかの場面の奥にある、秘められた過去の記憶や思考を表現しようとしているのだろう。この作品から強烈な印象を受けるのは「ヘルメス像」=ギリシャ神話だろう。それと歪んだ箱の中の「ビスケット」。無意識の記憶の底にある子供の頃の思い出としての「ギリシャ」と「ビスケット」。そう捉えていくと郷愁みたいなものが漂ってくる。

*「ジョルジョ・デ・キリコ」(1888-1978)イタリア人の両親のもとギリシャで生まれ、青年期をミンヘンで過ごした後、パリで画家としてデビュー。幼い頃のギリシャの記憶はキリコの魂を離れなかった。


「19歳のロートレアモン像」(1937、ダリの想像画)。 「マルドロールの歌」(ロートレアモン著)
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昔、文学を読んでいた時、ロートレアモンの「解剖台の上での、ミシンと雨傘との偶然の出会いのように美しい」という文章にであった。シュルレアリスムの原点になった有名な語句だが、それは既存の美の破壊を狙い新しい世界の到来を告げるものだったが、「デペィズマン」の手法はここから始まった。キリコの形而上絵画が「解剖台の上の、ミシンと雨傘の出会い」の美を目指したものだという。

作品をいくつか。
「通りの神秘と憂鬱」(初期)
通りの神秘と憂鬱

どこまでも続くアーチのある建物、輪で遊ぶ一人の少女、もう一人の人物の影が長く引き伸ばされている。空っぽの荷車、焦点の定まらない遠近法、、、この静寂感というか郷愁感はどうだ!

「ヘクトルとアンドロマケ」
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ギリシャ神話の「トロイ戦争」でギリシャ軍のアキレスと戦ったトロイアの勇将ヘクトルとその妻アンドロマケの像。2人が別れに際して抱き合う姿を描く。夫ヘクトルは戦死、幼い息子は殺されアンドロマケは敵方の妾にされるという悲劇の主人公を描いて、何を訴えたかったのか?

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キリコの作品は異なる物を一つの画面に組み合わせて、不思議な世界を作り出していく。今回代表作100点を見て不思議な親近感を持った。彼の作品の奥深い深層には幼い頃に過ごしたギリシャがある。ギリシャ神話の神々・神殿・建築物などが作品のどこかに登場する。また、キリコが通ったイタリアの町も原風景になっている。広場・城・寺院・あるいは、馬・ロボットみたいなマネキン。それらを組み合わせて90歳まで自由自在に描いた。恐るべきエネルギーではないか?

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ジョルジョ・デ・キリコ(1888~1978・ギリシャ生まれのイタリア人)
  形而上絵画派を起し、後のシュルレアリズムに大きな影響を与えた。


  1. 2014/12/01(月) 18:13:28|
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