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私の見た映画・美術・

映画・美術・イタリア旅行の紀行文の紹介です。

『日記』 「2013年の映画を振り返って」 その4 12.29

『日記』「2013年を振りかって」その4、12.29 

⑨ *「もうひとりの息子」(10月仏映画、ユダヤ系女性監督<仏>R・レヴィ。)
  *「そして父になる」(10月是枝裕和監督、出演、福山雅治、尾野真千子、リリー・
        フランキー、真木よう子、)
 赤ん坊の取り違いを題材にした映画が2つ。
「もうひとりの息子」はパレスチナとイスラエルがせめぎ合っている、ヨルダン川西岸地区が
 舞台。

もう1人の息子

「そして父になる」人気俳優による日本のホームドラマ。母親は自然に母親になるが、
 父親は子を愛しく思って父親になるのだ、と。

そして父になる

 何らかの事情によって赤ん坊の時取り違いが起こった。2人は違った家庭・親・人生を歩む
 ことになる。
 最近の日本でも類似の事件が起きていたことが報じられていた。
 しかし、これはフイクション。この事件・エピソードで何を表現するか?

 「もうひとりの息子」は舞台設定からパレスチナとイスラエルの長年の対立問題を如何にして解決するかがテーマとなる。息子は18歳。父親同士はすぐに言い合い争うが、母同士は互いに本当の自分の息子の写真を見て涙を流す。さて、子同士は?
 
 子にとって自分の「存在証明・レゾンデートル」を問われる重い問題でもある。自分は何人か?今まで信仰していた宗教の長老に会いに行って審問するが、血族が最優先といわれる。18年の愛と血族とはどちらが重要か?悩みは深まるばかり。

イスラエルで育てられた子がパレスチナの実父母に会いに行って、実父の弾くウードでアラビア語の民謡を歌い一家が解け合う素晴らしいシーン。

2つの地域(イスラエルとパレスチナ)を見下ろす高い大きな廃墟ビル。息子の1人が映り、カメラがパンして180度回るともう1人が映る。2つの世界をつなぎ合わせると1つになる。未来像をイメージした素晴らしいシーンだ。

ダフェール・ユーセフのオリエンタルな魂をゆさぶるような音楽がよかった。
 エマニユェル・ソワイエのカメラがよかった。西海岸のたゆたう海!それを見つめる主人公たち。主人公たちの表情に未来を感じさせる。

⑩ 
*「49日のレシピ」2013/秋、映画版(原作(伊吹有喜)脚本(黒澤久子)監督(タナダユキ)
            主演もオール・ウーマンの作品。
            出演、永作博美、石橋蓮司、二階堂ふみ、2013/12
*「8日目の蝉」2011/4(原作(角田光代)脚本(奥寺佐渡子)監督(成島出)もオール・
            ウーマン。映画版。
            出演、永作博美、井上真央、小池栄子、森口瑤子  
*『8日目の蝉」2010/3 テレビ版、原作(角田光代)脚本(浅野妙子)演出(佐々木章光)
            出演、壇れい、北乃きい
 (私が2013年12月にテレビで見たのは映画版の方。)

2作とも(映画版)永作博美が主演。前から気になっていた女優だったが、これほど女の内面を抉った作品を演じるとは驚き!

「子ども生む・産めない」が2作とも重要なキーポイント。

49日のレシピ

* 「49日のレシピ」
主人公百合子(永作)は子どもが出来ない為に、夫が愛人をつくり子どもをつくってしまつた。愛人からは「早く離婚してー」と迫られ心が凍りついて実家に戻ってみると、継母の突然の死で呆然としている父の姿があった。継母のことを思ってみる。継母も実の子を持たない人生だった。百合子にとって忘れられない悔いともいえる「思い出」がある。
母として登場した継母を幼い少女だった百合子は受け入れず、立派なお弁当をぶちまけてしまった。そのことが「悔い」として残り修復出来ないまま継母は死んだ。百合子は幼くして母を亡くし継母とも”母親像がつくれなかった“。(そのことは百合子の人間性として夫との関係にも影響が出てくる)
逆に継母としても”愛しい子ども像“が作れなかった。彼女は心の中でどういう人生を歩んだか?
今、夫の不倫・愛人の妊娠騒ぎで心がズタズタになった百合子は継母の一生と向き合うことになる。

* 「8日目の蝉」(2,011年にヒットして幾多の賞に輝いた作品。テレビで最近
 上映していた。映画版。)

写真館で
愛人の子どもを誘拐した女、希和子の4年に及ぶ逃亡劇と大人になった子ども・恵理菜の自分探しの旅がカットバックされて交互に描かれている。私は映画版のテレビを一人で見ていて号泣した。希和子を演じた永作博美に舌を巻いた。

不倫の愛人の子を堕胎した為に子どもが生めない体になってしまった希和子(永作博美)は、可愛い嬰児が欲しくて愛人の子ども誘拐してしまう。薫と名付けた女児を連れて4年に及ぶ逃亡の旅を続ける。

4歳の時、実夫母のところへ戻った恵理菜(井上真央)は一家がマスコミに騒がれ、実母は事件のことが頭から離れず喜怒哀楽の激しい対応を恵理菜にした。恵理菜は実母に馴染まず希和子を憎むことで大人になった。

成人して自立した恵理菜はバイトで忙しい日々を送っているが何故か冷え冷えとした雰囲気が漂う。愛した男は妻子があり、妊娠したと話すと希和子の時の父と同じ答えが返ってきた。「今はまずい。うちの子がもう少し大きくなったら、妻を必ず説得するから、こちらの条件を整えたらきちんとするから」(男はみなそうなのか?)さて、生むか堕すか?希和子と同じ運命をたどるのか?
恵理菜はいつの間にか希和子と同じ運命をたどっている自分が何者なのか判らなくなってきた。彼女は18年ぶりに再会した千草(逃亡中のエンジェルホームの時の幼馴染)と話すうちに、自分探しの旅を千草と一緒にすることになる。それは希和子との逃亡劇をたどる旅であった。題名の「8日目の蝉」、7日目で死ぬ定めの蝉がもし8日目を迎えたとしたら、明るいか暗いのか?
若い二人の女1

希和子は薫(恵理菜をそう名付けた)を連れて東京から西へ西へと走る。童話劇みたいなエンジェルホームでの生活。瀬戸内の夢のような海や島。そして小豆島。

逃避行1瀬戸内海

希和子の薫への最も聖なる愛。罪深き誘拐という犯罪の上に成り立ったものであったとしても。底知れぬ母性の愛しき嬰児への愛。美しき小豆島での愛は、薫の潜在意識に”愛の原風景“として刻まれていたのだ。
島を巡りながら薫はひとつひとつ糸を紡ぐように思い出してゆく。
母になる決心をする

物語の終章は「子どもを生み実母に喜んで貰おう」と千草に泣きながら訴えているシーンで終わる。
しかし、観客の心にはカットバックで映じられた希和子の至上の愛が燦然と輝いている。



みなさま
いつも ご来訪を頂きましてありがとうございます。

来るお年がよりよいものでありますように
心よりお祈りいたします。


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  1. 2013/12/29(日) 17:02:10|
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『日記』 「2013年の映画を振り返って」その 3、 12.27

『日記』「2013年の映画を振り返って」その 3 12.27

⑦ 「ハンナ・アーレント」(9月、監督マルガレーテ・フォン・トロッタ。主演、バルバラ・スコヴァ。)

 ちょっとしたアーレント・ブームが起こった。岩波映画館が連日の満員、この映画館としては稀有のこと。彼女の哲学書が増刷された。昨年のドイツで映画の公開と同時に起こったことが東京でも起こったといえる。雑誌や新聞にこの話題にしては少なからずの文章が載った。

ハンナ.アーレント

 ハンナ・アーレント(1906~1975)、ドイツのユダヤ系女性でハイデカーに師事した哲学者。第2次大戦中、ナチの手から、フランスの強制収容所から脱出してアメリカに亡命。ナチのユダヤ人虐殺の責任者アイヒマンの、1960年代イスラエルで裁判があった。アーレントは裁判の傍聴をして「イスラエルのアイヒマン」をニューヨーカーに寄稿した。文章をめぐっての一大騒動が起こり、そこに焦点を当てて映画化された。

 アーレントの主張を大雑把にまとめると以下の通り。
アイヒマンを「冷酷無比な悪魔」ではなく「陳腐で凡庸な悪」と名付けた。ファシズムは特別な存在からではなく、普通の市民から湧いてくる。
 当時のユダヤ人教会の幹部がナチと通じていたからあんなに大量の虐殺が生まれたことも否定できない。
 この論争で彼女はイスラエルから出版差し止めを求められたし、多くの友人を失った。

 映画の中で、彼女が10分間にわたって学生に熱烈な講義をするシーンが白眉だ。私は体が震えた。「考えることは人間を強くする。どんな危機的な情況をも脱出することができる。」60年代の世界だけではなく、今の日本の情況でもビンビン響いてくる言葉であった。
 
 この映画は10年にひとつ、と思った。

⑧ 「陸軍登戸研究所」(9月、日本映画学校監修。)

登戸

 陸軍中野学校とか陸軍登戸研究所とか731部隊の流れが戦後米軍に引き継がれた。朝鮮戦争、ベトナム戦争、、、
最近テレビで「盗聴者の証言」?というのをやっていた。ドイツのメリケル首相の電話がアメリカのCIAによって盗聴されていたニュースの関連で放映されたか?
戦後の占領下、米軍の中に日本の反体制の要人に対して尾行・盗聴などに従事していた日本版「小型CIA」が存在した。一時期2千人くらいいたという。漠然とテレビを見ていたのではっきりしないが本当だ。彼らは多くを語らずあの世に真実を持っていったという。数少ない証言記録だった。

アメリカの映画ではCIAやゲシュタポや秘密警察の「活躍」(!?)を面白可笑しく・格好良く撮ったのがウヨウヨある。ヒーローの活躍、スーパーマンの活躍。映画化しやすいのだろう、これからも発展し続けられる。

細菌化学兵器など最近シリアでもニュースがくすぶっている。「陸軍登戸研究所」は敗戦で終わったわけではなく、現代でも燻っている問題なのだ。


  1. 2013/12/27(金) 23:26:10|
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『日記』 「2013年の映画を振り返って」 その 2 12.25

『日記』「2013年の映画を振り返って」その2 12.25

⑤ 「25年目の弦楽四奏」7月
世界最高水準の「カルテット=弦楽四重奏団」(例えば全員ストラディヴァリの楽器が条件)の指導的地位にあったチェリストが難病に罹って引退することになった。残されたメンバーは動揺し、不安・ライバル意識・嫉妬・家庭の亀裂・不倫・不和とそれまで均衡を保っていた感情が崩れだす。

DSC_8960弦楽四重奏

リーダーの引退は日頃保っていた均衡を破り、感情や葛藤の人間ドラマを生んでゆく。25年の友情や同志的結合は何であったか?演じる4人のアカデミー賞に輝く名優たち。
4人の弦楽奏者を音楽家が演じたのではない。役者、それも弦楽器など持ったことが無かった俳優がプロの指導で世界的弦楽奏者に変身?する!
弦の振り方(と言うそうだ)が問題だそうだが、見事にやってのけるのだから恐れ入谷の鬼子母神だ。
クリストファー・ウォーケン(リーダーのチェリストを演じる・R・デ・ニーロと共演した『ディア・ハンタ』で助演男優賞に輝いた。)の老境の味が無類にいい。伝説の名チェリスト・パブロ・カザレスの言葉「私はとてもうれしいよ。一瞬でも素晴らしい音を聴けたことに感謝する。」を出して彼が講義するところ、映画が再び秩序を取り戻す転換点になった、と或る音楽家に教えられたが、存在感があった。
第2ヴァイオリンの快優フィリップ・シーモア・ホフマンが相変わらずいい味を出している。何しろ『カポーティ』で主演男優を取った役者だからだ。
世界的名奏者の引退と新星のデビューを見事に演出して見せてくれたことに感謝! 音楽的にもベートーヴェンの弦楽四重奏曲14番という難曲を使ってのことだから尚の事素晴らしい。

⑥ 「楽園からの旅人」9月 (『木靴の樹』のエルマンノ・オルミ監督)
ヨーロッパではこの何十年間難民、移民の問題が社会の根底にあってなかなか解決しない。トルコ・東欧・アフリカから「生活」を求めて流れてくる。映画の主題にもなっていた。

楽園からの旅人

オルミ監督は「ポー川のひかり」(06)で劇映画から引退を表明していたが、5年間の沈黙を破って発表した。
ヨーロッパ社会での、キリスト教社会でのメッセージである。
昔は(どのくらいの年数なのかは定かではない)人々が教会に集い・人々の暮らしの中に教会は生きていた。
今では古ぼけた教会は役割を終えた、無用なものとして取り壊そうとしている。そこへ、遠く地の果てからその地を追われて苦難の旅をしてこの地に逃れてきた民がいる。その人々はここで暫しの休みが取りたいといっている。
教会は真に使いたい人々のためにあるのだ。創世記の原点に立ち返ってもそうだ。管理者や保安隊が難民を排除するのを老司祭は体を張って止めようとする。
ここにオルミ監督のメッセージがある。
一般的に難民は「貧しく憐れな人」と言う概念があるが、映画では「気高く崇高な使命を持った人」というイメージを与えている。教会は真に必要としている者の物だ。
創世記では古代イスラエルのアブラハムからユダヤ・キリスト・イスラムの各宗派が生まれた。神は他の神と競わない。(各宗派の和解を言っている)
教会で生まれた幼児に「神の御子」の誕生を祝し聖歌を歌う。


  1. 2013/12/25(水) 23:08:32|
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『日記』「2013年の映画を振り返って」 その1 12.23

日記「2013年の映画を振り返って」その1、 12.23

記憶に残った作品
① 1月、「レ・ミゼラブル」(舞台制作、K・マッキントッシュ。出演、ヒュー
                ジャックマン。ラッセル・クロウ。アン・ハッサウエイ。

『映画』「レ・ミゼラルブル」

  1月4日。正月映画でブロードウエイのミュージカルの映画化として傑作。
 ドラマとしてしっかりとした構成、ジャン・バルジャン役のヒュー・ジャッ
クマン、過酷な運命を克服する男の苦悩をよく演じた。娘の身を案じたアン・
ハッサウエイの切なさは絶品。ドラマの中で歌が自然だった。


(*「椿姫ができるまで」(11月)は現代オペラを作ってゆくプロセスを映画化
 したもの。古典的なオペラのドキュメンタリーではなく、オペラ創造の過程
 がすなわち「現代オペラ・椿姫」の登場というスグレモノだった。主演のナ
 タリー・デセイのリリカル・ソプラノが良かった。)

② 1月、「アルバート氏の人生」(監督、ロドリゴ・ガルシア。制作・脚本・
主演、グレン・クローズ。

IMGアルバート氏の人生

19世紀のヨーロッパでは女性が自立して働ける職業は無かった。「ジェーン・エアー」の家庭教師が唯一の女性の職。この映画の男装して高級ホテルでウエイターとして働く奇妙さは、社会の女性差別が歴然とあったからだ。果たして男装した女性が女性と結婚してこの社会で生きられるか?
フェミニズムの強烈なパンチが効いた、グレン・クローズ会心の一作。

③ 6月、「嘆きのピエタ」(監督、キム・ギドク。主演、イ・ジョンジン。チョミンス。
  最近の日韓の冷え切った関係から公開される映画は少なくなった韓国映画。

IMG_0002嘆きのピエタ

  主人公は天涯孤独の孤児の高利貸し。高利で貸した相手に怪我をさせ、保険金で返済させるという冷酷無残な取立て屋。債務者の恨みの的になっていた。天涯孤独な孤児のはずの彼の前に母親だという女が現われ、彼が拒否しても見捨てたことを詫び徹底的に尽くす。疑っていた彼があることで信じだし、母性への思慕が芽生える。冷酷無残な取立てが出来なくなると同時に女は姿を消し、彼女を探し求める主人公。そこへ女から悲鳴と助けを求める電話が、、、
  韓国映画の傑作は見る者の魂を根こそぎ奪い取る力を持っている。

④ 7月、「さよなら渓谷」(原作、吉田修一、監督大森立嗣、主演、真木よう子、
                大西信満、
さよなら渓谷
  
大学野球部の合宿所で起きた集団レイプ事件の被害者と加害者が放浪の果
て同棲している。被害者の自殺未遂、リストカット、勤めた会社での事件
による退社、結婚も離婚と事件の後遺症は彼女について離れない。
加害者のひとりだった彼が謝罪のために彼女の前に現われ、二人の「さす
らい」が始まった。真木よう子と大西信満の最大限の演技力だ。罪と罰、
謝罪と復讐、憎悪と愛、それらを背負って2人は冬に向かうにび色のよう
な風景をさすらう物語だ。


  1. 2013/12/23(月) 23:17:03|
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『2013年映画』 「8日目の蝉」(12.17、原作角田光代。主演、永作博美。井上真央)

『2013年映画』「8日目の蝉」(原作角田光代、監督成島出、脚本、奥寺佐渡子、
               出演、永作博美、井上真央、小池栄子、森口瑤子

BSで永作博美主演の映画「8日目の蝉」(2011年制作)をやっていた。壇れい主演の2010年のテレビドラマは見ていないので、比較できませんが永作の映画に久しぶりに号泣した。(涙せんが緩んできた?)

写真館で
不倫相手の子(恵里菜)を誘拐・逃避行をした希和子(永作博美)。彼女は彼の子を中絶して子どもを産めない体になっていた。可愛い嬰児が欲しかった。

4歳の時、実父母のところに戻った恵理菜(井上真央)は、実の母になじめず一家がマスコミに叩かれて、希和子を憎むことで大人になった。成人して自立し、バイトで忙しい彼女だが何故か冷え冷えとした雰囲気が漂う。
愛した男は妻子があり妊娠したと話すと、希和子の時の父と同じ答えが返ってきた。「今はまずい。うちの子がもう少し大きくなったら、妻を必ず説得するから、その時まで」(男はいつもこうなのか?)さて、堕すか産むか?希和子と同じような運命をたどるのか?

映画は希和子と薫(恵里奈を希和子が付けた)の4年間の逃避行と現在の恵里奈の自分探しの物語がカットバックされて交互に描かれてゆく。

若い二人の女1
ルポライターの千草(小池栄子)が介添え役になって、恵理菜の自分探しの旅が始まる。それは希和子の逃避行をたどる道であった。薄ら覚えの微かな記憶がだんだんと鮮明になってゆく。

逃避行1瀬戸内海
薫を抱えた希和子の逃避行は瀬戸内海の、夢の島=小豆島が舞台であった。
「いろいろなものを見よう。何でも見せてあげる。きれいなもの、秋も冬も。何でもみせてあげるよ!」

逃避行は描き方によっては名所めぐりにもなる。小豆島の観光ルート、思い出の場所。思い出のシーン。
山の急斜面に立つ「笠ヶ瀧(かさがたき)寺」――中山千枚田(幻想的な虫取りの舞台になった)――農村歌舞伎舞台――戸形崎(とがたざき)の海岸(希和子が薫を抱き寄せてささやいた海辺)――福田港(島の玄関口で二人が島に入ってきて、又引きさかれた別れの港)

点火する2人
瀬戸内の青い海と美しい島々の風景をカメラは夢の島・楽園として撮ってゆく。
楽園のなかでの希和子の薫との慈しみの生活は、人生の最高の愛情の溢れた日々であった。

逃避行4海辺の2人
人の一生で一番可愛いといわれる、嬰児から幼児時代のカオルを希和子は一緒に過し、最大限に愛したことは本当に幸福だ。
「カオル、ありがとう!ママ、カオルと一緒で幸せだった。」
「ママはもういらない、何にもいらない!カオルが全部もっていって!」「大好きだよ、カオル!」といってカオルを抱きしめる。

カットバックされた逃避行の後半、涙が出て仕方がなかった。希和子に感情移入してしまう。満腔の思いの母性愛、母の情、哀しい、万葉人(まんようびと)のいうがごとくかなし。永作博美に合った役柄であり、最高の演技であった。

千草と共に逃避行の思い当たる場所を巡ってゆく恵里菜だが、ひとつひとつ思い出してゆく。希和子に連れて行ってもらったあすこ、ここ。感涙に咽ぶ彼女、母になる決心がついた。だが実母のところへ帰って、母に喜んでもらうという演出。

母になる決心をする
恵理菜が本能的に感じたものは、ここに最高の愛があった。人生では2度と得られぬ至上の愛だった。自分も我が子にそうせねばならぬ、と。


  1. 2013/12/17(火) 10:44:54|
  2. 2013年『映画』
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美術/音楽/舞台「カイユボット展」12.11 ブリヂストン美術館

美術/音楽/舞台「カイユボット展」(ブリヂストン美術館。~12.29)12.11
     都市の印象派、日本初の回顧展

DSC_0945カイユボット展

<ギュスターヴ・カイユボット>(1848~1894)
印象派好きの日本人だけど、殆どの人は始めて耳にするだろう。印象派のパトロン的な存在が美術史の定説だった。
富裕なブルジョアジーの家に生まれて生涯絵を描いたり、収集家として過ごした。印象派に属し、出品すると同時に仲間たちの作品を買うことで支援をした。

近年、画家としての評価が高まってきた機運を捉えて、印象派を収蔵・収集の基調としてきた「ブリヂストン美術館」が初めての「カイユボット回顧展」を開催した。

私も彼を印象派のパトロンぐらいしか思っていなかった。今度ブリヂストンで見て、近代都市の憂鬱や都会人の感性を描いた画家ではないかと思った。カイユボットが切り取った感性は、20~21世紀を先取りした新しいものではないかと思われた。

① 都会の孤独を描いたと思われる作品。
* 「窓辺の女(室内)」

窓辺の女

女は窓辺に立ち背を見せて窓の外を見ている。男は新聞を読んでいる。
男と女はどのような関係か?二人の間には親密さとは対極な関係すら伺える。室内の装飾をしっかりと描いている様子から深遠な孤独感・距離感を漂わしているとも感じられる。
同系列の作品として、*「パリの通り」

パリの通り

*「読む女性」

読む女

多くの作品に描かれた背を向けた後ろ向きの人物である。

② 複数視点による、作品の重層化・多面化。
* 「ヨーロッパ橋」

ヨーロッパ橋

  左側の男女・真中下の犬・右側の下を見ている男・大きな鉄橋と、多様な視覚点で描かれている。遠景のビル群が左から右まで鉄橋の隙間を通して描かれ、男女はどういう関係か?手すりに腕を突いて頬を手で覆っている男は何を考えているのか?近代に入ったパリの風景である。
* 「ピアノを弾く若い男」

ピアノを

左側の人物・ピアノ・窓のカーテン・レースはしっかりした描き方である。右の変形のピアノは遠近法なのだろうか?先半分を圧縮して描いている。
* 「昼食」

昼食

大きなテーブルに遠景の母と執事、中景の弟、恐らく手前の大皿は本人の分のだろう。大皿は上から見下ろしているのに対して、ビン・コップ類は横からの視点。セザンヌやピカソやマチスなど皆試みた技法だ。

* * <ギュスターヴ・カイユボット>(1848~1894)
 1,876年に遺言、83年、89年補足している。父、続いて弟が亡くなって書いた。収集した絵画を国に寄贈する。(評価されるまで何十年かわからないが、と先まで見通している。)ルーブルで飾って欲しいと言っている。
オプテミズムとは反対の人生観に立ったといえる。彼の絵の孤独感はここから来ている。本質的な近代の孤独感だ。ボオドレールやヴェルレエヌ(日本の訳詩がセンチすぎるが)が歌ったパリの近代の憂鬱である。
  1. 2013/12/11(水) 23:33:51|
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『日記』「特定秘密保護法」反対デモ 12.8


『日記』「特定秘密保護法」反対・参議院議面前・集会12/4~6

デモ2

12月6日(金)深夜、とうとう「特定秘密保護法」は強行成立した。
戦争が出来る国へ(集団的自衛権行使容認へ)、そのために反対する市民を強圧し黙らせ(秘密保護法)、最終目的の憲法改正に、一歩踏み出した。

4・5・6と国会・参議院議面開館前につめかけた。何十年ぶりか。
戦後「焼け跡・民主主義」(現憲法でもある)によって成長したわが身にとって、
憲法が破壊されることは黙ってはいられない。

集会1

「特定秘密法」が何故NO!か。
①<防衛・外交・スパイ・テロ>の中から「国の安全保障に著しい支障を与える恐れのある情報」を各省の長が「特定秘密」に指定する。(政府の一存で決る)
②その「秘密」を公務員が漏洩した場合=懲役10年。
        欺き・脅迫で取得した場合= 10年
       漏洩・そそのかし     = ?
 と処罰して「秘密」の漏洩を防ぐことにある。
③ 「秘密」の中身を第3者機関でチェックすると野党の説得のために小出しに出したが、政府部内の機関では意味が無い。

野党の追求に担当大臣の答弁が二点三点したが、政府側のバックを取り仕切っていたのが、警察の内調(日本のCIA)だという。治安機関主導の、権力に邪魔なものを取り締まる=戦前の治安維持法をイメージさせる。公務員だけではなく市民全般に及ぶ、市民の知る権利・表現の自由の侵害など憲法で保障された権利はどこへゆくのか?

DSC_0971立てカン

衆議院を強行採決してから、参院・委員会を強行採決してから、火が点いた!

集会2

3日間、参議院・議面前の「秘密法」反対の集会・デモに参加して思ったことがある。集会の司会・シュプレヒコールをやる男女数人が極めて自由でユニークだったことだ。

「秘密保護法・反対!」「与党は恥を知れ」「石波の顔は恐いぞ!」「強行採決こそ、テロだ!」~~~(ここまでは、当たり前)
「自由が・危ないぞ!」「権利が・危ないぞ!」「命が・危ないぞ!」
「戦争する国・絶対反対!」「自由の無い国・絶対反対!」「権利の無い国・絶対反対!」~~~
「もっと自由に・生きさせろ!」「もっと、もっと・声あげろ!」

パフォーマンスなんだ! 踊るような、歌うような、シュプレヒコールをやっていた。唱和する女性や若者たちも、同じようなパフォーマーに興じていた!
単なるスローガンではなくて、内容のある言葉だ!日頃思っていることを、パフォーマーで表現している!


  1. 2013/12/08(日) 23:42:31|
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2013年『映画』 「四十九日のレシピ」(12.4、伊吹有喜原作、永作博美主演)

『2013年映画』「四十九日のレシピ」(タナダユキ監督、伊吹有喜原作、黒沢久子脚本、
  出演、永作博美、石橋蓮司、二階堂ふみ、岡田将生原田泰造、荻野有里、淡路恵子。

49日のレシピ

原作も監督も脚本も主演もオール女性の作品。心の傷を癒し、人間の再生を描くほのぼのとした物語。

愛人の赤ん坊を盗んでの3年半の逃亡劇を描いた「8日目の蝉」で、数々の賞に輝いた永作博美の次の問題作! 地味だけど女の人にぜひ見てもらいたい。

家の前を流れる川の情景が映し出される。場面の展開の毎に何度も映される川の情景は、劇中人物の心情や見ている我々の気持ちを代弁しているかのようだ。

夫の不倫で結婚生活が破綻し疲れ果てた百合子(永作博美)が実家に帰ってみると、妻の乙美(荻野有里)の突然の死で生きる意欲を失った父良平(石橋蓮司)の姿があった。

失意の父と娘のところへ、イモ(二階堂ふみ)というハイテーションのロリータ少女が訪ねて来た。生前の乙美から、四十九日までの細々とした家事を引き受け、アルバイト代は貰ったという。乙美の残した「レシピ」を見せ、「四十九日には皆で飲んで歌って楽しい大宴会をやって」との遺言を授かっているといった。友人の日系ブラジル人の「カルロス矢部」(岡田将生)も呼び寄せた。
* 実はイモもカルロスも乙美が生前ボランティアをしていた施設の元生徒だった。

「暮らしのレシピカード」は父も娘も知らなかった。家事にまつわるちょっとした知恵やアドバイス、その中に自身の四十九日のこと、父と結婚するまでの天蓋孤独の人生が書かれていた。乙美は空襲で母を亡くし、母がどういう人か知らないという。(百合子の例でも触れるが、継母乙美も心の中で母親像が作られていない。母親は何をすべきか?どういう母親になっていいのかわからない)

何をしていいかわからなかった良平と百合子はイモやカルロスたちに励まされて、乙美の希望の「四十九日」の準備にかかっていった。

乙美の遺した「人生のレシビ」に導かれて年表を部屋中に張り出す。百合子が「子どもを産んだことがない人の人生なんて空白だらけなのね」言うとおり、家族史からみれば殆ど空白である。その空白を埋めるものは?

産みの母が死んでしばらくして、百合子が始めて乙美に会ったのは、父が再婚のため新しい母として紹介された時。その時、笑顔の乙美が差し出す立派なお弁当を幼児の百合子は拒否してぶちまけてしまった。そのことは「悔いの思い出」として後を引いた。幼い少女にとって新しき母はすぐには受け入れられない。が、彼女が成長する過程で修復できたはずだが、百合子は「継母」乙美との距離を縮められずに大人になってしまった。心の中で母親像が作られ無かった。継母乙美の場合と同じだ。そのことが彼女の結婚生活や人生全体に影響を与えているのではないか?

百合子は自身が母になろうとしてなれなかった。夫との子どもを作れなかった。夫との関係も母との距離と同じように問題があったのではないか?夫の子を妊娠した愛人との修羅場を避けて実家に帰ってしまう百合子?
何故、簡単に引くの?
彼女は人生において自分の意思を通すことをしてこなかった。自分の判断で生きてこなかった。
彼女が一番にやるべきことは「おっか(乙母)」と向き合うことではないか?

家族史では空白の多い乙美の人生だが、外では素敵なレシピやボランティアでの活動があった!

レシピの美味しそうな食べ物。
* 塩ラーメンにバターが入ったの。
* 揚げ立てのコロッケをソースでビシャビシャにしたの。
* おいしい豚まん。
それぞれ、レシピと出来上がった食品を絵に描いている。

空白を埋めたのは、乙美のボランティアで知り合った人々だ。集って、自分と乙美との思い出を年表一杯に書き込んだ!
乙美は血縁とは離れて、不幸な他人の一生に関わり、多くの人生の友人や子どもを持った。年表が埋まってゆく過程に私は涙が出て仕方なかった。

淡路恵子扮する伯母の唐突な変身ぶりがおかしい。演出の危うさか?

永作博美が気になる女優だと思っていたが、本作でその素晴らしさが実証された。作品の人間像を深く読み込む力を持っている。なかなかの読解力だ。

二階堂ふみ、「WOMAN」でも難しい役をよくやっていると思っていたが、なるほどいいなあー。この女優さんもバッドな役もハッピーな役もこなせる恐るべき成長株!

乙美の荻野有里、劇中の人柄で得をしている。

『日記』12・4
ジャナーリスト・学者の反対声明が連日相次ぐ中で「特定秘密法案」が通りそうだ。私みたいな戦後民主主義で育った人間には到底耐えられない。自民の幹事長の「デモがテロだ」の発言は、反対のデモを本心で恐がっているとも思えず、威嚇・恫喝としか思えない。又、その裏に政権党の都合の悪いデモには強力な治安・武装で臨むぞ、というハラが透けて見える。

みなさん!デモに行きましょう。「秘密法案」に反対しましょう!
                

  1. 2013/12/04(水) 10:36:05|
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