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私の見た映画・美術・

映画・美術・イタリア旅行の紀行文の紹介です。

『2014年映画』 「幸せのありか」(監督マチェイ・ピェブシツア。主演ダヴィド・オブロドニク)ポーランド映画。岩波ホール12/25

『2014年映画』「幸せのありか」(監督マチェイ・ピェブシツア主演ダヴィド・オブロドニク) 
                   ポーランド映画、岩波ホール、12/25

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幼いマテウシュは身体的に重度の障害を持ち、その上に医師から知的障害児で植物状態・不治の病と宣告された。
映画はマテウシュの成長を記録映画のように撮っていく。
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成長するにつれ、指はいびつに曲り、背骨は湾曲し、首は座らないので、独りで立つたり歩いたりも出来ない。言葉を話せず、彼に出来ることは刺激に対する反応と本能の要求であるが、見ることは出来るし聞くこともできる。いや、成長するにつれて心の中で様々な思いを巡らせていたのだ。しかし、思いを伝える方法を知らない。そのもどかしさに必死にもがき苦しむ様子は痛々しく、見ている者を緊迫感で包む。
彼は2階の窓から家々の風景―それぞれの家庭の様子や男女の関係を見た。妻に暴力を振う男や抱き合う男女だった。家から外に出られない彼にとって唯一の社会の窓だった。その中の優しい少女に淡い気持ちを抱いたりする。
初恋

彼を一番可愛がった父は夜空の星を見ることの楽しさや、自分の意思を示すために拳骨(げんこつ)で床を叩くことや車椅子を作ってくれたが突然の病で死んでしまう。深い愛情を振り注いでくれた母は彼の介護で疲れ腰を痛め入院してしまった。姉の結婚を機に彼は知的障碍者向けの施設に入れられてしまう。
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施設の入所者の中で彼だけが知的な好奇心をもっているし性的好奇心もある。介護者の乳房に点数を付けたり興奮したりする。極めて若者らしい行動だがヒステリーとされ「発作」扱いされる。若く美貌のボランティアと束の間のデート、その恋も無残に終わり青春の苦さを味あう。しかし、施設では「植物状態」の死体のように扱う。理解されない苦悩にもがき苦しむマテウシュ。
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ベテランの介護士から「瞬きで意志を表すこと」を教わり、やっと自分の意思を表現することを覚えた。人間の世界にやっと仲間入りしたことなのだ!「植物状態」と言われた患者が「自分は知性と感情を持ったひとりの人間であることを」証明したのだ。人間賛歌の胸に迫るシーンであり、透明な音楽もいい。

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知的障害、身体の重度の障害があり、「植物状態」と医者から誤診された主人公が、不屈の意志と努力で「知性と感情」を持つ人間であることを証明した映画。
しかし、健常者である私は理解が浅薄のように思う。障害者の本当の苦しみが解らない。映画がひしひしとわが身を打ってきたのは後半、後半の表現方法を身につけ、自分の意志を表し始めてからだ。この映画のテーマ、もの凄い忍耐力と労苦で掴んだ「人間になること」の意味を噛みしめている。

エンディングで「エヴァ・ピエンターを偲んで」とあった。若くして亡くなったエヴァは監督マチェイ・ピェブシツアの学生時代からの友人で、この映画は実話に基づいて製作された。

監督・脚本、マチェイ・ピェブシツア
 1964年ポーランド生まれ。ジャナーリストとして活躍しながら、テレビ・映画の脚本家になる。「木っ端みじん」(2008年)で デビュー、映画祭の賞に輝く。

主演、ダヴィド・オグロドニク
 1985年ポーランド生まれ。2012年クラコフの演劇大学を卒業。パヴェウ・パヴリコスキ監督の「イーダ」に出演している。  主人公マテウシュを演じるために、何か月も準備し、集中訓練を受け、実際に障害者にも会い、パントマイムの指導も受 けた。熱演である。
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* 本年はいろいろとありました。記事があちらこちらに飛びましたがお付き合い下さって
有難う ございました。感謝申し上げます。
  来年、お会いしたいと思います。有難うございました。



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  1. 2014/12/25(木) 15:42:55|
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『2014年映画』 「紙の月」 (原作・角田光代、監督・吉田大八、主演・宮沢りえ) 12/10

『2014年映画』「紙の月」(原作、角田光代。監督、吉田大八。出演、宮沢りえ。池松壮亮。
小林聡美。大島優子。田辺誠一。 12/10

女性の犯罪を女性作家が取り上げることが多いのは、女特有の心理を女性だから掘り下げられると一般的に思われているからか?「8日目の蝉」で子供を盗み、その逃亡劇を書いた角田光代が、今度は女性銀行員の使い込み事件を取り上げた。

紙の月 タイトル①

「紙の月」の主人公梨花(宮沢りえ)は、短大を出て、結婚し、郊外の一戸建てに住んでいる。夫(田辺誠一)は海外に展開する企業のエリートサラリーマン、子供がいないので銀行に契約社員として働いている。仕事は順調で上からも評価されているのだから何も不満はないはずだ。安定した人生を送っていたはずの彼女が何故金を使い込んだのか?1億円もの大金の横領にまで至ったのか?

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夫の仕事が忙しくて構ってくれない・子供がいない・生活に張り合いがない・たまたま若い学生(池松壮亮)に誘われたなどの理由が考えられるが,全てそうだと言えばその通りだが何故か腑に落ちないのだ。主人子を演ずる宮沢りえが宇宙人的で掴みどころがないのだ。何年か前に見た「父と暮らせば」のリアリズムと違った妖精のようなニューアンスは何だろう?
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梨花は顧客の家で見かけた大学生に誘われるままにホテルに行き、買い物の支払いのために顧客の預かり金に手を付けたことを切っ掛けに、預金を使い込んでいく。金は大学生との密会に使い、夫が上海に単身赴任すると益々のめり込んでいく。
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彼女は店頭で気に入ったブランドの鞄などあれば「あっ!」という間もなく買ってしまう。日常から一線を越えるシーンは宇宙人になったみたいだ。それまでの家庭生活、銀行、顧客の家庭訪問の日常の毎日のシーンから一線を越えるかのような飛躍なのだ。初めびくびく坂道を転げ落ちていった梨花は、大胆になり、高級ホテルでの密会では一流モデルみたいに美しく、かつ束の間の自由と開放感を味わう。
職場には、不正への誘惑を口にだけする悪魔的な同僚(アイドルAKB48の大島優子)と、良識と打算の典型みたいな融通の利かない同僚(小林聡美)が、誘惑と牽制の役割を果たして映画の厚みをだしている。
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映画の冒頭のシーン、主人公梨花がカトリックの女学生の時、貧しいアジアの子どもを救うために寄付をした。修道女の演説に感動して寄付に熱中する彼女。同級生の熱が冷めても執拗に諦めない梨花、父親の財布から大金を盗んで寄付をする梨花。横領して大学生に貢いでいる彼女に、女学生時代の寄付する梨花が重なる。彼女の心の深層に蠢(うごめ)きトラウマになっているのは、「貧しい子どもを救うための寄付」ではないのか?
そのために父親の財布に手を付ける=銀行の金を横領する、とは同質のトラウマから発しているのではないか? ではそのトラウマの真相とは何か? 「貧しい子に恵みを与える」という宗教的憐れみではないのか?女学生の時の講堂というか教会というか、「神の御心」という異様な雰囲気での修道女(校長)のお説教が全ての根源ではないかと思えてくる。

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 ラストでアジアの屋台、貰ったリンゴをかじるシーン、店主の顔の大きな痣は、女学生時代に寄付のお礼に送られてきた少年の写真、顔の大きな痣に似ていた、、、異国の雑踏に消えて行くラストシーンが鮮やかに印象に残った。

  1. 2014/12/10(水) 15:44:05|
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『2014年映画』 「0・5 ミリ」(監督・脚本、安藤桃子。出演、安藤サクラ、柄本明、坂田利夫、津川雅彦、草笛光子 11/27

『2014年映画』 「0・5ミリ」(監督・脚本、安藤桃子、出演・安藤サクラ、柄本明、坂田利夫、
                 津川雅彦、草笛光子、  上映時間=3時間半   11/27

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俳優奥田瑛二の長女・安藤桃子監督が妹・安藤サクラを主人公に製作した介護をテーマにした映画「0・5ミリ」。「かぞくのくに」で注目していたが、安藤サクラは期待を裏切らない大器だ! 面白かった!3時間半の長尺が苦にならなかった。
俳優の安藤家・柄本家総出の支援、アホの坂田利夫(吉本興業)の爺さんぶりは傑作!

高知が舞台。介護士のサワ(安藤サクラ)は、派遣先で火事に巻き込まれ派遣会社を失職、寮からも追い出され、貯金もなく・家もなし・職なしの、流浪の身になった。全てを失った主人公のロードムービーの始まりである。


見知らぬ町でサワちゃんは孤独なお爺ちゃんを見つけては、その生活に入り込み食・住を確保する。その食らい付き振りは強引だ。相手の弱みにつけ込んで半ば脅迫的に入っていく。あくどい詐欺師かと思わせるが、引き換えに家事や介護を立派にこなしていきお金を取るとかの悪事はしない。完璧な介護・家事の出前サービスみたいだ!お爺ちゃんの心に寄り添った心憎いばかりの介護・行動はまるで天から舞い降りた<天女>のように思えてくるから不思議だ。映画最初のシーンで喉からの痰の吸引のシーンも専門的に優れたものだという。(介護の専門性からの優れた視点)

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自転車泥棒の現場を目撃した茂(坂田利夫)の家まで押しかけ強引に住み込む。親身になって作った手料理、投資詐欺から守り、清潔な部屋、母親のような叱咤激励はやがてお爺ちゃんの心を解きほぐしていく。やがて老人ホームに入っていく茂がサワに冬物のだぶだぶのコートと年代物の「いすゞ117クーペ」をあげる。茂役のアホの坂田(吉本興業)が抜群に巧い!演じるお爺ちゃんのボケ振り・笑い・悲哀は何とも言えない。せっせと貯めた大金を土産に、たくさんの人々が拍手喝采で迎える老人ホームの階段を上っていく茂。そのシーンは天国への階段かと皮肉にも錯覚してしまうばかりのキラキラ輝く雅(みやび)な世界だ!

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セーラー服本万引きの真壁先生(津川雅彦)の現場を押さえ、「私がセ―ラ―服を着ます」と半ば脅して家に入り込む。先生は昔教師の堅物で毎日講義と称して家を出る。どこへ行くのか?本に囲まれた家には昔オペラ歌手の夫人(草笛光子)が痴呆で寝たきりになって家政婦が週何度か来る。
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家政婦が「家を乗っ取る」ではないかと心配するほど、サワちゃんは家事・介護をよくやる。真壁の偽善性はセーラー服本への興味や、することがないのに講義と称して毎日家を出ることからも暴露されるが、むしろ先生が戦争体験の話を長々と繰り返すシーンに、監督の本音「戦争は恐い、戦争は嫌だ」が反映されており、と同時に先生の痴呆性も暗示されている。サワちゃんが先生を指導して寝たきりの夫人を車椅子に移し替える作業など本格的な介護を見せる。

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元気にオペラを歌う夫人と寝たきり・痴呆の夫人が交互に幻想的に映し出されて、映画の深みを出している。

高知の穏やかな地方都市や田園風景を舞台に繰り広げられる寓話的な物語は楽しい。映画は舞台の土地が人間的に良い風土だと思わせる魔力を持っているかのようだ。

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主人公のロードムービーの背景に、介護の現実や現場、投資詐欺など老人を巡る問題を伺わせるが、映画は天使のようなバイタリティー溢れたサワちゃんの不思議な物語である。画面をはみ出すような安藤サクラの八面六臂の活躍ぶりに私はゲラゲラ笑い爽快な気分になった
映画はどうやら「最初のエピソードの場面の奇妙な家族」が問題であって、最後にその家族の問題に戻っていく不可思議な展開になって、サワちゃんのロードムービーは続いていく。

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安藤姉妹の不思議な活力あふれた映画に圧倒された、3時間半だった。
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  1. 2014/11/27(木) 10:23:57|
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『2014年映画』「シャトーブリアンからの手紙」(「ブリキの太鼓」のシュレンドルフ監督)    10/29

『2014年映画』「シャトーブリアンからの手紙」(「ブリキの太鼓」のシュレンドルフ監督)
                   監督・脚本フォルカー・シュレンドルフ 10/29
                   出演(仏)レオ=ポール・サルマン、マルタン・ロワズィヨン、
                   オデット・ネリス、マルク・バルべ、ジャン=ピエール・ダルサン、  
                   (独)ウルリッヒ・マテス、アンドレ・ユング、ヤコブ・マッチェンツ

「ブリキの太鼓」の名匠ドイツのシュレンドルフ監督の久々の作品である。

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3歳で成長を止め、ブリキの太鼓を叩き奇声を発しガラスを叩き割るというオスカル。奇異なキャラクターとグロテスクな描写でヨーロッパの戦前から終戦までの激動の時代を描き、ナチに飲み込まれていくポーランドの姿を鮮やかに浮かびあがらせた名作であった。見た者を忘れさせない映画だ。

ドイツとフランスの和解がなければヨーロッパはない、という信念の下にドイツ人「ブリキの太鼓」のシュレンドルフ監督が挑んだ大作。占領下のフランスでドイツ軍によって罪なき人質のフランス人が大量虐殺された史実―17歳の少年ギィ・モケ、レジスタンスの象徴となった―に独・仏の和解を賭けて挑んだ。

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1941年10月20日、フランスのナントの町でドイツ軍地区司令官が暗殺された。ヒトラーは即座にその報復として、フランス人150名の銃殺を要求。そしてシャトーブリアンの収容所から選ばれた27名の中に、17歳の少年ギィ・モケがいた。

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彼の殉教はレジスタンスの英雄になり戦後、パリの地下鉄のある駅の名に命名されたほどだった。
2007年、フランスの大統領に就任したサルコジが、ギイの手紙を「愛国心の発露」として全国の高校生に読ませることを決定した。共産主義者であったことを伏せてである。地下鉄の駅名になったほど戦後共産党がギイを殉教者として神話化させたが、今度は民族の英雄として祭り上げた。
ドイツ人シュレンドルフ監督はそのどちらにも加担せず、銃殺された27名の一員として生き生きと描いた。英雄化しなかった。

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監督はこの映画のどこに力点を置いたか?事件から70年後の現在、どこに問題点を据えたか?

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パリの独軍駐仏総司令官のオットー将軍は典型的な伝統あるプロイセン将校でナチと対立している。シュパイデル参謀長も反ナチである。参謀長の友人で軍令部付のエルンスト・ユンガー大尉(ドイツの代表的作家)等は集まって「犯人を早く逮捕しないとベルリンが過度の報復を言ってくる」と危惧した。パリの独軍首脳陣の苦悩と動揺を捉えている。駐仏ドイツ大使が来て「総統は正午までに報復を求めておられる。フランス人150人の処刑だ」。
パリの独軍首脳陣は何とかヒトラーの命令を阻止しょうとがんばるが、初めに50人、1日ごとに50人と少し先延ばしにするのがやっとだった。ベルリンから人質のリストを作れ、早く処刑しろという命令が矢継ぎ早にくる。やむを得ず各地に人質のリストを作れという指示を出す。
オットー将軍が作家のユンガーに、この一件を記録することを依頼した。しかも軍事報告書ではなく、文学的なものをというリクエストだった。(「パリ日記」)

処刑を実行する地方ではどうか?
シャトーブリアン群庁舎では、フランス人の副知事のルコルヌが人質リスト作りを拒否するが、独軍の隊長から「良いフランス人」を犠牲にするのかと迫られ、しぶしぶ、政治犯が多い「ショワゼル収容所」から選択することを受け入れる。
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人質リストが各地で作成されて、噂が広がり事態を知ったフランス人の間で動揺が起きる。「報復のリスト」がパリからシャトーブリアンに戻ってきた。見るとリダーのタンボや明日釈放予定のラレ(ソルボンヌ大学の共産主義学生のリーダー)や少年ギィが入っていた。副知事は「恐ろしいミスだ」と隊長に修正を要求したが、隊長に「では代わりを選べ」と突き返される。代わりに誰か、善良なフランス国民を選ばなければならないのだ!
副知事に代表されるように、良心的フランス人の消極的な抵抗は様々な場面で行われたが、状況が非情過酷であり流れに流されていく悲劇。

収容所では、所長が「名前を呼ばれた者は、6号棟へ」と名を呼んでいく、、、釈放予定のラレが抗議するが「リストにある」と取り合わない。ギィが呼ばれた時、医師のモリスが「この子は若い、まだ子供だ!」と抗議するが、所長によって「リストにある」で却下される。
人質たちに副知事が告げる。「君たちは1時間後に銃殺される。私は何ひとつできない」家族への手紙を預かることを約束した。

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「最期の時」のため、モヨン神父が呼ばれる。人質たちが共産主義者で無神論者であることを踏まえつつ、彼らの最期に寄り添うのである。(その役割を他の所ではドイツ人神父が担った。その神父は死を前にした人が最後に心を開いた人として、戦後・仏独和解の象徴的存在になったという)
リストを作成した副知事に「君も加担していることに何故気づかない?」と迫り、「銃殺は暗殺を、暗殺はさらなる銃殺を生み、報復の連鎖にしかならない」と語る。銃で脅すドイツ兵に「あなたは何に従う?」「命令の奴隷になるな」「良心の声に従いなさい」と諭す。
神父を通して普遍的な永遠のテーマを問題にしている。官僚主義である。極限状況において「上からの命令」が絶対か?ひとりの人間として何に基づいて行動するのか?これは極限状況だけでなく、一般的に組織や社会のいたる所にある問題ではないか!

ラレは最後の10分間だけ、妻との面会を許された。ギィは家族に手紙を書いた。

パリの司令部にヴィシー政府(ナチの傀儡(かいらい)政権)のペタン元帥から「人質にかわって自分をドイツに差し出す」という申し出が届く。ベルリンに拒否され、反対にペタンは暗殺を非難し、対独協力を呼びかける演説をすることになった!!

パリの総司令官の将軍は、辞職の決意をユンガーに伝える。ユンガーは人質たちの最期の潔さに触れ、この事件をきっかけに変革が現れるだろうと予言した。

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太平洋の海岸線で銃殺の準備が行われている。独軍の新兵ハインリッヒは体を震わせ辞退を願いでるが却下される。
人質たちが、トラックに乗せられ収容所を出る。残る者や女性たちが一斉に叫びながら見送る。ギィは急いで好きだったオデットに手紙を書いて託す。

銃殺が始まる。殆どの者が目隠しを拒んだ。銃殺は行われていく。最期の言葉「自由万歳!」「フランス共産主義万歳!」中には「ドイツ共産主義万歳!」と叫んで倒れて行く者も、、、
ギィの最期の手紙の言葉「17歳と半年。あまりにも短い人生。皆と別れるけど後悔はしない」

銃殺のシーンの人質たちは凛々しい。ドイツ人の監督として一人残らず勇気ある正義の男として描いた。派手な英雄視ではなく、人質たちはひとりの人間として死んでいった。独仏の架け橋となることを祈っているシュレンドルフ監督は、フランス人の人質の立派さも、命令されて加担せざるを得なかったフランス人の苦悩も描いた。プロイセンの伝統を感じさせる反ナチのドイツの将校の苦悩も描いた。冷酷非情の歴史を変えられなかった悲劇であったとしても。

新兵のハインリッヒはパニックで倒れるが非情なシーンを見た者としてドイツの戦後を生きなければならない。この冷酷非情な責任をどう取るか。

* フォルカー・シュレンドルフ監督(1939年ドイツのウィスバーデン生まれ)は
  1966年「テルレスの青春」で注目された。1979年「ブリキの太鼓」1984年「スワンの恋」
  1971年、後に「ハンナ・アーレント」を撮るマルガレ―テ・フォン・トロッタと結婚。(1971-91)
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* 後半部分をのちほど訂正するかも知れません。

* 私用によりしばらく休みます。





  1. 2014/10/29(水) 21:28:36|
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『2014年映画』「誰よりも狙われた男」(原作ジョン・ル・カレ、監督アントン・コービン主演フィリップ・シーモア・ホフマン)10/20

『2014年映画』「誰よりも狙われた男」(原作ジョン・ル・カレ、監督アントン・コービン 10/20
                      主演フィリップ・シーモア・ホフマン、レイチェル・
                      マクアダムス、ウィレム・デフォー、ロビン・ライト、
                    グレゴリドブロギン、ニーナ・ホス、ダニエル・ブリュール

 題名②

スパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレの「誰よりも狙われた男」をアントン・コービン監督が映画化、その主役を、本年2月に急逝した名優フィリップ・シーモア・ホフマンが演じた。遺作となった。

ホフマンは昨年の夏にブログでも触れた「25年目の弦楽四重奏」に出演した名優である。第2ヴァイオリンで世代交代の時、第1ヴァイオリンをやりたいと野望の心情をむき出しにする役柄だった。腹の出た平凡そうな中年の男。役によって脇役でも主役を食うといわれる名優振りを発揮する。ホフマン最期の映画になってしまった。ホフマンに逢うためにだけにこの映画を見た、とも言える。

米ソの冷戦が終わって、3・11で世界の政治構造は欧米対イスラムに変わった。
ドイツのハンブルクは9・11テロの時、実行犯たちが根城にして計画を練ったところとして知られ、自由都市の港にはアラブ社会からの難民や亡命者が流入し、又、世界の防諜機関が暗躍していると言われている。

DSC_4320.ホフマン ①
ここを根拠地として非合法の対テロ対策チームを率いるバッハマン(ホフマン)は叩き上げのボスだ。以前の手痛い失敗のせいか(CIAによるとされる)精悍さの風貌に孤独の影を漂わせる。煙草とスコッチを手放さず、
昔からの助手のイルナ(ニーナ・ホス)を使いながら、巨体をせかせかしながらスマホを常にいじり回して連絡・指示・情報と忙しい。

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密入国した青年イッサ(グリゴリー・ドブリギン)をイスラム過激派として追う。

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イッサは人権団体の女性弁護士アナベル(レイチェル・マクアダムス)を通して、

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英国人銀行家ブルー(ウィレム・デフォー)と接触。ブルーの経営する銀行の秘密口座が狙いだという。さてその秘密口座はどういう存在か?イスラム教徒のイッサは何者か? 何をしょうとしているのか?

主人公バッハマンは彼を泳がしてテロ援助資金のもっと大物を釣ろうと目指すが、ドイツの合法防諜機関や

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米のCIAがテロ容疑で逮捕に動こうとする。防諜組織の熾烈なせめぎ合い、獲物の争奪戦、灰色に淀んだ憂鬱な古い港湾都市ハンブルクの街で繰り広げられる。

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曇天の運河、貧民街の薄汚れた街路、誰もいない工場地帯、毒々しいネオンの繁華街、はっと驚くような緑の公園や紅葉。
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熾烈な防諜が繰り広げる舞台として役者が揃っている。
彼を支援する美しい弁護士アナベルの純粋さ、容疑者イッサはチェチェンのイスラム教徒らしいこと、ロシアの防諜から迫害されてきたことが分かってくる。バッハマンは彼らを援助することで大きな獲物を得ようとするが、、、

ジョン・ル・カレの原作はスパイの熾烈な闘いよりスパイの苦悩や人間性を描いてきた。ここでもバッハマンの絶えず煙草とアルコールを手放さない日常、日常漂う非情な孤独感、山場にかかって興奮を冷ますためにピアノでソナタを弾くシーン。最後に見せた巨大組織に振り回される無念といった激情を、
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名優フィリップ・シーモア・ホフマンが見事に演じる。映画ファンは2月に急逝したホフマンを忍んで思いを馳せるだろう。

* チェチェン問題は一般的にはロシアにおける過激派のテロと片付けられるが、もっと根深くチェチェン独立の長い歴史がある。大国ロシアに挟まれた小国の、長年にわたっての独立への闘いの歴史である。



  1. 2014/10/20(月) 14:50:36|
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